2004.03.21

スピリチュアル・アストロロジー談義

岩田 「桃井君、スピリチュアル・アストロロジーにおいて、金星はどのような役割をすると思う?」

桃井 「金星ですか、K.N.ラオ氏の『Learn Hindu Astrology Easily(邦訳 ラオ先生のやさしいインド占星術−入門編−)』には、『I have seen hundreds of men and women with Venus in the 10th house becomeing more showy than sincere in spiritual pursuits.(10室の金星は、精神世界に対する誠実な探求よりは、これ見よがしの宗教生活になる)』って書いてありますから、マイナスの役割になるじゃないんですか?」

岩田 「相変わらずラオ氏は過激で辛辣なことを言うね。

 確かにラオ氏の本を読むと、木星とケートゥは解脱の表示体として高い評価を与えているし、ラオ氏のジョーティッシュ・グルは水星にも高い評価を与えている。
 それに対して金星の良い面として、『Love for religious songs, love to decorate religious places and compose music for particularly female goddesses.(宗教的な歌を愛し、聖なる空間を飾ることを好み、また神々や、その中でもとりわけ女神に対する賛歌をつくる。)』と書いているけど、『これ見よがし』発言の後のフォローとしては、ちょっと苦しいね。」

桃井 「金星の表す芸術で宗教的なものを飾るくらいしか、金星のスピリチュアル・アストロロジーにおける役割って無いんですか?」

岩田 「今回、スピリチュアル・アストロロジーにおける金星の役割を談話室に取り上げようと思ったのは、某ヨーガ・アシュラムに招かれて集中的に鑑定をおこなった時に、金星のスピリチュアルな意味合いについて、これまでより理解が深まったからなんだ。」

桃井 「先日の招待ですね。」

岩田 「日本でヨーガと言うと、一般にはインド式健康体操という認識が優勢だと思うけど、ラーマクリシュナ・パラマハンサやスワミ・ヴィヴェーカーナンダの本や記事を読んだ人は、バクティ・ヨーガ、カルマ・ヨーガ、ギャーナ・ヨーガという三つのヨーガがあることを知っていると思うんだ。
 また、佐保田鶴治氏の翻訳ヨーガ経典を読んだことのある人は、ラージャ・ヨーガやハタ・ヨーガというヨーガがあることを知っているよね。

 これらのヨーガの中でバクティ・ヨーガと金星には、本質的な意味で深い関連があるのを何回か確認している。」

桃井 「ヴィヴェーカーナンダの『バクティ・ヨーガ』と言う本は、副題が『愛と信仰のヨーガ』ですよね。とても素敵な表現なんで印象に残っています。
 たしかに金星が、愛と信仰のヨーガと深い関係があるというのは、とても自然に納得出来ますね。」

岩田 「出生チャートでバクティ・ヨーガを表している惑星配置の例としては、5室に金星と木星が在住やアスペクトしているケースとかは、典型的なバクティ・ヨーガのチャートと言える。
 5室には神々に対する熱愛と献身という意味があり、その5室に愛情を表す金星と宗教性を表す木星が同室している惑星配置は、インド占星術におけるハウスや惑星の象意を組み合わの結果として、自然とバクティ・ヨーガを表すことになる。

 実際、バクティ・ヨーガ的な信仰生活を送っている女性には、5室に金星と木星のアスペクトや在住があるチャートの持ち主が多いことを確認しているから、この解釈はかなり有効だと思うよ。」

桃井 「5室や木星とコンビネーションを組んでいない金星は、スピリチュアルな意味を持っていないんですか?」

岩田 「たとえばインド占星術の本を読むと、7室や12室に在住する金星についてはあまり良い意味が書かれていないよね。でも今回招かれたアシュラムの集中的な鑑定で、7室や12室の金星にもスピリチュアルな意味があることに気付いたんだ。
 ダルマ・ハウス以外の7室や12室に在住する金星でも、スピリチュアルな生活に生かすことが可能なことが、実際に確認出来たのは大きな収穫だったね。

 これは普段から言っている『スピリチュアル・アストロロジーにおいては、惑星にもハウスにも本質的な吉凶はない。』というテーゼの真実を示していると思うんだ。」

桃井 「7室や12室の金星って、インド占星術の古典を読むと不倫とか、それに類した意味が載っているので、自分のチャートの7室や12室に金星のある女性って、けっこう悩むんですよね。」

岩田 「インド占星術は強力なだけに、技法を中途半端な理解で使ったり、本の記述する意味をそのまま使ったりすることによって、偏った一面的なリーディングをおこない、自分が悩んだり、人を傷つける可能性も高いのは確かだね。」

桃井 「そういう意味では、インド占星術を学ぶ人には『スピリチュアル・アストロロジーにおいては、惑星にもハウスにも本質的な吉凶はない。』という言葉を、心にとめておいて欲しいですね。」