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検証 占星術

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惑星の地位

●高揚(Uchcha、最高星位)と減衰(Neecha、最低星位)

○西洋占星術における星座の利用方法 <性格診断>

 トロピカル星座帯を使う西洋占星術と、サイデリアル星座帯を使うインド占星術とでは星座の利用方法そのものがかなり違います。西洋占星術は太陽が入っている星座によって人の性格を判断します。これについては、私も深く研究したことがありますが、確かに有効だという実感があります。単なる12分類ですが、性格的特徴は非常によく表しているように思います。トロピカル星座帯は、春分点を基点として1年を12に均等分割するので、季節が性格に与える影響が大きいのかも知れません。また、他の惑星についても、トロピカル星座帯で、どの星座に在住するかによって、その在住する星座の特徴を帯びるとしています。例えば、水星が水瓶座に在住していると、「冴えた、常識にとらわれない思考、論理的思索力」など、水瓶座が持つ性質を帯びるというわけです。 

○インド占星術における星座の利用法 <惑星の吉凶を測る道具>

 しかし、インド占星術ではそのような見方をすることはあまりありません。インド占星術では、星座は性格診断よりも、惑星の力量を調べるために使用されます。例えば太陽は牡羊座にあるとき最高星位に到達し、このとき太陽の力量が最高になります。また、その対向の天秤座にあるとき最低星位に到達し、このとき太陽の力量は最低になります。つまり、それぞれの惑星に対して特定の星座が最高星位として割り当てられており、その星座に在住する時、それぞれの惑星の力量は最高になります。そして、この最高星位の正反対の位置に最低星位が存在します。
  この最高星位と最低星位の星座位置については西洋占星術とほとんど同じですが、インド占星術では、さらに最高星位点と最低星位点の区別があり、同じ最高星位の星座に在住していても、最高星位点に近いほど惑星の力量は高くなり、同じ最低星位に在住していても、最低星位点に近いほど惑星の力量は低くなります。

 また、これは西洋占星術にはない概念だが、最高星位の次に力量が強い星座は、ムーラトリコーナになります。それぞれの惑星の最高星位、最低星位とムーラトリコーナついては下の図を参照してください。

<インド式ホロスコープ>
金星
27
太陽
10

03
 
  高揚 木星
05
火星
28
 
    土星
20
水星
15
水星
15
土星
20
   
  減衰 火星
28
木星
05
 
 
03
太陽
10
金星
27
 この図は、南インド方式のホロスコープを使用しています。この方式では、星座位置は魚座が左上にくるように固定されていて、西洋占星術式のホロスコープと違い、星座は時計回りに配されています。アセンダント(ラグナ)が入る星座が1室となり、その次の星座が2室、その次の星座が3室という具合になります。このハウス・システムでは、1つのハウスの幅は1つの星座の0度から30度未満です。
  火星
00-12

04-27
 
土星
00-20
ムーラトリコーナ  
  太陽
00-20
木星
00-10
  金星
00-15
水星
16-20

○トロピカル星座では使えない

 西洋占星術では、これらの最高星位や最低星位の考え方はあるものの、ホラリー以外では実践的にはあまり使われません。最高星位や最低星位を考慮する場合、トロピカル星座帯だとサイデリアル星座帯から24度もずれますので吉凶が逆になってしまうこともあり、実践的にほとんど使いものにならないのです。とにかく西洋占星術においては理論だけの技法ですが、サイデリアルのインド占星術では、これが惑星の吉凶、その強弱を判断するためにもっとも重要な要素の一つとなっています。

 インド占星術では、その他の要素を抜きにして考えれば、惑星が最高星位に位置しているとき、その惑星の力は強力になり、その惑星が表示する事柄やその惑星が支配するハウスが表示する事柄は強力になります。例えば、太陽が最高星位に位置していると、太陽が支配する父親や心臓、プライドなどに関して、運勢が強くなります。逆に最低星位である天秤座に位置していると、弱くなるというわけです。
 例えば、金星がトロピカルの天秤座20度にあったとしましょう。天秤座は金星の定座です。この場合、金星の力は強くなるはずです。ところが、サイデリアル星座帯では、乙女座27度になり、これは金星の最低星位点です。金星は恋愛、女性、内分泌器官、腎臓、泌尿生殖器、などを表示していますが、実際の例では、金星がトロピカル天秤座、サイデリアル乙女座の場合、恋愛でのトラブルや内分泌系や腎臓、泌尿生殖器系の病気をもっていることが非常に多いです。
 それでは、実例に移りましょう。実例では、西洋占星術方式のホロスコープを用いて、トロピカル星座帯とサイデリアル星座帯の対比をしていきます。

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●実例1.甲状腺機能亢進症を患っているある女性の場合

○トロピカル星座のホロスコープ

 次の図は、甲状腺機能亢進症を患っているある女性クライアントY.Mさんのホロスコープをトロピカル星座、プラシーダス・ハウスで作成したものです。彼女のホロスコープをこのような形で公開することについては本人の了解を得ています。

 甲状腺機能亢進症は内分泌系、しかも、喉の病気です。これはメディカル・アストロロジー(医学占星術)では、内分泌系も喉も、どちらも金星がつかさどっていますので、金星がつかさどる病気であるとされます。

トロピカル・ホロスコープ
トロピカル・ホロスコープ

 しかし、このホロスコープでは、金星はアスペクトによる激しい剋傷も無く、さほど傷ついているようには見えません。それどころか、金星は天秤座で定座に入り、強くなっています。

○サイデリアル星座のホロスコープ

 次のホロスコープは、Y.Mさんのホロスコープをサイデリアル方式に変換したものです。ハウス・システムはインド占星術で用いられる「星座=ハウス」のシステムです。

サイデリアル・ホロスコープ
サイデリアル・ホロスコープ

 このホロスコープでは、アセンダントは牡牛座に移行します。その人の健康状態ともっとも関わるハウスは、アセンダントの入っている1室(身体のハウス)、次に6室(健康のハウス)です。また、その人の健康状態をもっともよく表す惑星は、1室の支配星、次に6室の支配星ということになります。1室・牡牛座と6室・天秤座の支配星はどちらも金星です。したがって、金星が彼女の健康状態をあらわす惑星であるといえます。

 そして、このサイデリアル星座帯を用いたホロスコープでは、金星は、金星にとっての最低星位、乙女座に位置しています。しかも度数は24度12分。金星の最低星位点は乙女座27度なので、そのわずか3度手前に位置していることになります。一部のインド占星術の古典によると、最低星位点を超えると、その最低星位の意味合いは無くなるという考えがあります(実際には無くなるようには見えませんが、ある程度その意味合いが薄れるのかもしれません)。

 最低星位の度数の手前3度という位置は、最低星位の度数に非常に近く、しかもその度数を超えていませんので、激しく傷ついています。ある惑星が、最低星位に位置すると、その惑星の力量は低くなります。土星や火星のような凶星はその凶意がさらに強くなり、金星や木星のような吉星はその吉意が失われます。その結果、金星や、金星が支配するハウスが表示するテーマについて、障害が出るのです。そして、一部の主張によると、惑星の最高星位や最低星位がもっとも強く影響を与える部分は身体であるといいます。今まで私の研究してきた結果でも、この主張はかなり妥当性があるように思います。Y.Mさんのホロスコープでは、彼女の健康状態をもっともよく表している金星が最低星位にあって力がありません。よって、金星に対応する身体部位、甲状腺の障害が出ているのでしょう。

 ついでに、インド占星術的なアスペクトでは、5室に在住する金星は対向星座にある11室の土星のアスペクトを受けるので、彼女が病気になった原因の1つは、愛情問題(5室、金星)におけるストレス(土星)であると解釈できます。また、(恋愛のハウス)5室の支配星である水星と病気のハウス6室の支配星である金星のミューチャル・レセプション(星座交換)もこのことを再確認しています。

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●実例2.大富豪ビル・ゲイツの場合

○ビル・ゲイツのトロピカル・ホロスコープ

次に、大富豪ビル・ゲイツのホロスコープをご紹介しましょう。以下はトロピカル星座帯、プラシーダス・ハウス・システムで作成してあります。

トロピカル・ホロスコープ

 彼の出生図では、トロピカル星座帯の蠍座20度の金星と、同じく蠍座21度の土星のタイトなコンジャクションが特徴的です。特に、西洋占星術では金星は金銭を表示し、土星は貧しさを表示しますので、このアスペクトからは、なぜ彼が世界で一番の資産家なのか説明できません。『金銭・富(金星)を努力(土星)して、現象化(土星)させる』と、解釈できないこともないですが、それはあくまでもこのホロスコープの持ち主が「ビル・ゲイツ」であることをあらかじめ知っていたらの話です。

 もし、だれのホロスコープか告げられずに彼のホロスコープを見せられたとして、果たしてあなたは、「このホロスコープの持ち主は紛れもなく大富豪である」ということを理解できるでしょうか?

○ビル・ゲイツのサイデリアル・ホロスコープ

サイデリアル・ホロスコープ

 インド占星術によれば、彼の知的な優秀性や彼が企業家として大成功することは歴然としています。その詳しい理由については、ヨーガの説明のところで触れさせていただきますが、とりあえず、今回のテーマは「惑星の最高星位と最低星位」ですので、これに絞って説明します。

 左図は、サイデリアル星座帯、「星座=ハウス」システムで作成した、ビル・ゲイツのホロスコープです。

 このインド占星術のサイデリアル星座帯では、金星も土星も天秤座に移動しています。天秤座は金星にとってはムーラトリコーナ(最高星位の次に強い星座)、土星にとっては最高星位にあたります。双方とも、パワフルな星座にあります。さらに、インド占星術では金星と土星は友好関係にあるので、これも大変よいということになります。

このように、インド占星術では星座を性格診断のためだけではなく、惑星の力量を測る目的にも使用しています。むしろ、性格診断のために星座の性質を云々することはあまりありません。

文:Hada Yoji 編集:Charak

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