検証 占星術王者のヨーガ(Raja Yoga)●人生の覇者は「王者のヨーガ」を持っているヨーガとはサンスクリット語で“結びつき(コンビネーション)”を意味します。惑星の支配、アスペクトなど、ある特定の惑星配置(コンビネーション)によって、その人がどのようなカルマを持っているのかを知ることのできる技法です。 ヨーガの中で最も重要なものの1つは「王者のヨーガ」です。このヨーガはそのコンビネーションを持つ人に、関連するハウスや惑星の分野において強力な力を与えます。 ただし、「王者のヨーガ」をもっているからと言って、それだけで、「大活躍できる」とか「人生の成功者になる」と判断してはいけません。「王者のヨーガ」を考慮する場合、どのくらいの数の「王者のヨーガ」が形成されているか、その強さはどうかなどを十分に検討する必要があります。 ケンドラ(1室、4室、7室、10室)とトリコーナ(1室、5室、9室)が関連するとき「王者のヨーガ」が形成されます。関連するとは、コンジャンクション、アスペクト(相互)、ミューチャル・レセプション(星座交換)などでケンドラとトリコーナが互いに関わることです。 例えば、5室の支配星と1室の支配星が相互にアスペクトを形成したり、同じハウスに入ったり、あるいはミューチャル・レセプション(ハウスの支配星同士が入れ替わること)したりすると、ケンドラの1室とトリコーナの5室が関連することになり、「王者のヨーガ」を形成します。また、トリコーナの9室の支配星がケーンドラの1室や10室に入ったりすることによっても「王者のヨーガ」は形成されます。 ●王者のヨーガの表示体(ラージャ・ヨーガ・カラカ)ところで、「王者のヨーガ」の中には、他の惑星と関連しなくても、生まれつき単独で「王者のヨーガ」を形成する惑星が存在します。これを「王者のヨーガの表示体(ラージャヨーガ・カラカ)」と呼びます。 例えば、牡牛座アセンダントの場合、土星は、トリコーナの9室山羊座とケーンドラの10室水瓶座の両方を支配します。したがって土星は、「王者のヨーガの表示体」です。 この場合、土星は、他のハウスや惑星と関連しなくても、単独で「王者のヨーガ」を形成します。つまり、牡牛座アセンダントにとって土星は大吉星なのです。逆に、一般的には大吉星であるはずの木星は、牡牛座アセンダントにとっては、8室と11室を支配するため、大凶星となります。 ただし「土星が吉星化しても木星になることはないし、木星が凶星化しても土星になることはない」ことは覚えておく必要があります。例え土星が「王者のヨーガの表示体」となっても、制限や厳しさ、勤勉さなど土星的特徴は変わらず、その吉凶だけが変化します。また、木星が凶星となっても、抑圧や制限といった土星の特徴が出るわけではなく、あくまでも木星が弱い時の特徴である怠惰さやルーズさが現れてきます。つまり、惑星の性質自体が完全に入れ替わることはありません。 同様に、天秤座アセンダントの場合も、土星は4室、5室を支配することになり、ここでも「王者のヨーガの表示体」となります。蟹座アセンダントの場合も、火星が5室と10室を支配するので、火星は蟹座アセンダントにとって「王者のヨーガの表示体」となります。また、獅子座アセンダントの場合も、火星が4室と9室を支配するため、ここでも火星が「王者のヨーガの表示体」となります。 ●【実例】 霊的な天才、聖者ベルナデット○9室での強力な「王者のヨーガ」が示す真実それでは、「王者のヨーガ」の実例に移りましょう。最初にご紹介するのは『ルルドの泉』で有名な『聖者ベルナデット(Saint.Bernadette)』のホロスコープです。 彼女は1844年1月17日14時、フランスのルルドの貧しい農家の6人兄弟の長女として生まれた。彼女はルルドで聖母の14のヴィジョンを体験し、後に修道院に入ったが、1879年4月16日に35歳の若さでこの世を去った。彼女は、死後、1933年に聖者の列に加えられた。彼女がヴィジョンの前で祈っていた場所で、透明な水が涌き出てきた。そして、人々がルルドに集まるようになり、その水の中に神秘的な治癒効果があることが発見されたのである。人々は今日もこのルルドの泉を訪れているという。これが有名なルルドの泉である。 果たして本当にベルナデットは聖者なのだろうか? ○聖者ベルナデットの出生図における強力な「王者のヨーガ」以下のホロスコープは聖者ベルナデットの出生ホロスコープです。記録では、1844年1月7日の14時に生まれたことになっていますが、この14時ちょうどの出生記録は一般的に疑わしいと見てください。人が14時ちょうどと言ったようなきりの良い時刻に生まれることなど滅多にありません。そこで、彼女の死亡時期などで出生時刻修正を行ってみました。私が導き出した出生時刻は、13時48分28秒です。14時から約12分ずれていることになりますが、この位の時間のズレはごく当たり前のことです。このズレは、今から説明する彼女の出生図における「王者のヨーガ」には影響ありません。しかし、タイミングを計る上で、若干(約2ヶ月)のズレが生じます。また、分割図を使用する場合は、致命的となりますので必ず出生時刻の修正が必要です。 ここでは西洋占星術のホロスコープを使用していますが、星座システムはインド占星術の方式・サイデリアル星座システム、ハウス・システムは「星座=ハウス」で作成しています。本当に彼女は聖者なのか、彼女の中に卓越した宗教性が存在しているのかどうか検証してみることにしましょう。
彼女のアセンダントは牡牛座です。したがって、彼女自身を表す1室(ケーンドラ、トリコーナ)の支配星は金星となります。この金星は高い精神性や功徳、宗教を表す9室(トリコーナ)の山羊座に在住しています。また、西洋占星術的には、この金星はMCと1度以内でタイトにコンジャクションしています。 つまり、この聖者ベルナデットの出生図では、すべてのトリコーナ(1,5,9室)の支配星ともっとも強力なケーンドラの支配星(10室)が9室に在住しており、これは非常に強力な「王者のヨーガ」を形成しているといえます。 この中でも、土星は、牡牛座アセンダントにとっては「王者のヨーガの表示体」なので、大吉星です。しかも定座である山羊座に在住しているので、これも一つの強力なヨーガとなっています。 したがって、聖者ベルナデットは真に高度な精神性・宗教性・功徳を有した本物の聖者であったと結論づけることができます。私は、特にキリスト教を信奉しているわけではありませんが、彼女が聖者であったことは、インド占星術によると、疑いようがない事実といえます。たとえ、ヒンドゥー教の実践者であろうと、仏教の実践者であろうと、キリスト教の実践者であろうと関係ないでしょう。彼女の出生図中の9室での強力な「王者のヨーガ」は、9室が支配する分野、高度な精神や宗教の分野において卓越することを十分に表示しています。やはり、彼女の神に対する帰依は本物なのだと理解できます。 文:Hada Yoji 編集:Charak |
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