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検証 占星術

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惑星サイクル

●インド占星術における未来予測の鍵 「ダシャー・システム」

 ダシャー・システムは非常に便利なインド占星術の未来予測技法です。ダシャー・システムは厳密に言えば100種類以上も存在しています。これらは大きく、聖者パラーシャラ方式の惑星サイクルと聖者ジャイミニ方式の星座サイクルの2種類に分けることができます。その中でも、今回は最もポピュラーで信頼度の高い、聖者パラーシャラ方式のヴィムショタリ・ダシャーと次にポピュラーなヨーギニー・ダシャーで検証していきたいと思います。これらのダシャーによって、出生図中のヨーガ(「王者のヨーガ」をはじめとする様々なヨーガ)によって表示されているカルマが、いつの時期に発現するかを知ることができます。惑星はダシャー期間に、その力を十分に発揮し、もともと出生図においてその惑星が示している事象を現象化させるのです。

○ヴィムショタリ・ダシャー

 ヴィムショタリ・ダシャーは120年を1周期とするサイクルです。出生図中の月のサイデリアルにおける星座と度数を基点として惑星サイクルが展開します。惑星サイクルの順番とそれぞれの惑星に割り当てられる期間は決まっていますが、ここでは簡略化のため説明を省略します。

 最も大きなサイクルのダシャーをマハー・ダシャーと言い、それをさらに小さく分類したものをアンタラ・ダシャー、さらに小さなサイクルはプラティヤンタラ・ダシャー、その次はスークシュマ・ダシャー、さらにその次はプラーナ・ダシャーと言います(ここで言うアンタラ・ダシャーをブクティと呼び、プラティヤンタラ・ダシャーをアンタラ・ダシャーと呼ぶ流派もあります)。

 どこまでも細かく分類することはできますが、通常はマハー・ダシャーとアンタラ・ダシャーだけを使用する占星家がほとんどです。しかし、より正確なタイミングを計算する時には、最低プラティヤンタラ・ダシャーまで検討するべきでしょう(私の場合、出生時刻が正確なときはプラーナ・ダシャーまで検討することもあります)。

 マハー・ダシャーの支配星は現象の大きな傾向を表し、アンタラ・ダシャーの支配星はマハー・ダシャーの惑星の示す範囲内でのより細かな傾向を表し、プラティヤンタラ・ダシャーの支配星は実際に物事が現象化する正確な時期を表します。

○ヨーギニー・ダシャー

 次に、ヨーギニー・ダシャーについて説明しましょう。こちらのほうは、ヴィムショタリ・ダシャーと違って、36年で1つのサイクルを形成します。そして、サイクルの順番とそれぞれに割り当てられる期間はヴィムショタリ・ダシャーとは異まります。

 難しいことは抜きにして、今のところはヴィムショタリ・ダシャーとはサイクルの順番と長さが違うとだけ覚えておいてください。

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●【実例】 聖者ベルナデットの神秘体験

○「王者のヨーガ」が発現する時

 「検証 占星術 王者のヨーガ」では、聖者ベルナデットの持つ精神性、宗教性が非常に高いことが証明されました。ここでは、インド占星術の未来予測の鍵、ダシャー・システムを使用してさらに検証を進めていくことにしましょう。

○ヴィムショタリ・ダシャーにおける神秘体験の検証

 それでは、聖者ベルナデットの身の上に起こったことをもう一度見ていきましょう。

 1858年2月11日、まだ14歳の少女ベルナデットは他の子供達と一緒に薪を集めていた。そこで、彼女は、初めて神秘的な聖母マリアのヴィジョンを体験する。それから3日以内に再度ヴィジョンを体験し、その後は、2月18日から3月4日までの間、毎日、聖母のヴィジョンを体験することになる。

 そして、彼女がヴィジョンの前で祈りをささげていた場所で透明な水が涌き出てきた。この泉に人々が集まるようになり、その水の中に治癒効果があることが発見された。

 下の表は1858年2月11日、聖者ベルナデットがはじめて聖母のヴィジョンを体験した時のヴィムショタリ・ダシャーです。

ヴィムショタリ・ダシャー
水星-木星-ラーフ-火星 1857/12/22
水星-土星-土星-土星 1857/12/29
水星-土星-土星-水星 1858/01/23
水星-土星-土星-ケートゥ 1858/02/14
水星-土星-土星-金星 1858/02/23

  この時、マハー・ダシャーは水星、アンタラ・ダシャーは土星、プラティヤンタラ・ダシャーは土星、スークシュマ・ダシャーは水星です。これは、水星−土星−土星−水星のように表現できます。すなわちこの時期は、彼女の出生図中の水星と土星で表されるカルマが、まさに現象化していた時期であったことは一目瞭然でしょう。

 「検証 占星術PART3」でも説明したとおり、水星は5室(トリコーナ)の支配星、土星は9室(トリコーナ)および10室(ケンドラ)の支配星で「王者のヨーガの表示体」です。そして、この2つの惑星は互いに友好関係にあります。また、土星は9室山羊座で定座に入り、水星は同じく9室山羊座で友好的な星座に入り、どちらも強力な「王者のヨーガ」に関わっています。さらに、その9室に牡牛座アセンダントの支配星である金星(ケンドラおよびトリコーナの支配星)が在住していることにより、この「王者のヨーガ」が本人にとって非常に重大な結果をもたらすことを保証しています。もともと出生図のすべてはアセンダントおよびその支配星と関連して考慮されるべきです。したがって、アセンダントの支配星と同居したり、アセンダントやアセンダントの支配星にアスペクトをしている惑星のダシャーは特に作用が強烈です。

○インド占星術におけるヴィムショタリ・ダシャーの位置付け

 「検証 占星術PART1」で、「インド占星術はその吉凶を判別する技法を、このアシュタカヴァルガ以外にも豊富に有している。」と説明しましたが、その技法の1つは、このヴィムショタリ・ダシャーであることは間違いありません。西洋占星術で使用される各種のプログレッションやディレクション、トランジット法などは確かに便利で、私もよく使用しています。しかし、それだけでは「何が実際に起こるのか?」、「その吉凶の程度は?」について理解することはとても難しいといえます。例えば、プログレッションやディレクション、トランジットなどを見ていると、常にいろんなアスペクトができています。そのため、あまりにも多くの可能性がありすぎて、実際に何が生じるのかを判断することは難しいのです。

 しかし、インド占星術には、出生図を解読し、その人の中に潜むカルマ(宿命)を理解する技法があるだけでなく、各種のダシャーによって、そのカルマがいつ発現するかを理解することができます。そして、トランジットやアシュタカヴァルガによって、さらにそのタイミングを絞り込むのです。

 私は、常にこのヴィムショタリ・ダシャー以外に6種類くらいのダシャー(惑星サイクルおよび星座サイクル)を検討しています。しかし、慣れないうちは混乱を招く可能性があるので注意が必要です。最初は最も重要なヴィムショタリ・ダシャーに習熟し、慣れてきた段階で、徐々に別のダシャーを加えて検討していくようにすれば良いでしょう。そうして、いくつかのダシャーを同時に使用できるようになると、より正確に判断することができるようになでしょう。

 別のダシャーを使用しても、同じ惑星のダシャーが何度も強調されるような時は、その惑星によって示されている事象は起こると確信することができます。

○ヨーギニー・ダシャーによる神秘体験の検証

 それでは、次にヴィムショタリ・ダシャーの次に信頼性の高いヨーギニー・ダシャーを使用して、聖者ベルナデットの検証を続けましょう。

ヨーギニー・ダシャー
土星-火星-木星-月 1858/02/06
土星-火星-木星-太陽 1858/02/07
土星-水星-水星-水星 1858/02/08
土星-水星-水星-土星 1858/02/14
土星-水星-水星-金星 1858/02/21

   1858年2月11日、彼女がはじめて聖母のヴィジョンを体験した時、彼女のヨーギニー・ダシャーは土星−水星−水星−水星でした。これはヴィムショタリ・ダシャーとほとんど同じです。ヴィムショタリ・ダシャーと違うのはマハー・ダシャー、アンタラ・ダシャー、プラティヤンタラ・ダシャー、スークシュマ・ダシャーなどの順番だけです。

 彼女が聖母のヴィジョンを体験した時、出生図中に示されている強力な「王者のヨーガ」にスイッチが入っていたことが、ヴィムショタリ・ダシャーと、このヨーギニー・ダシャーによって二重に確認することができます。

 ヴィムショタリ・ダシャーは120年で1サイクル、ヨーギニー・ダシャーは36年で1サイクルです。これを考えると、このような別のダシャーで、偶然に同一の惑星だけがダシャーの支配星になる確率はほとんどないことがご理解いただけるでしょう。

 このように、重大な現象が起こる時には、別のダシャー・システムを使用しても、同じ惑星が何度もダシャーの支配星として登場するのです(実は、私が普段使用している別のダシャー・システムでもさらに検証してみましたが、すべて9室に関連するダシャーでした)。

○トランジットによる神秘体験の検証

 トランジット法で上記のことをさらに検証してみましょう。

 下の図は、内側の円が聖者ベルナデットの出生図、外側の円が1858年2月11日正午、彼女がはじめて聖母のヴィジョンを体験した時のトランジットです。

トランジットチャート

 この日の昼頃、彼女の出生図中の9室に在住する土星に対して、トランジットの水星が正確にコンジャクションしていました。「王者のヨーガの表示体」土星と「ヨーガの表示体」水星が強力に作用していることがわかります。

 また、トランジットの土星は9室(高度な精神性・宗教)と12室(潜在意識・霊的体験)にアスペクト、トランジットの火星も9室と12室にアスペクト、トランジットの木星も12室を通過していました。

※別の個所でも述べましたが、インド占星術では惑星は惑星に対してだけではなくハウスにもアスペクトします。そして、すべての惑星は対向ハウスに対してアスペクトしますが、火星、木星、土星の3惑星については特別ルールが存在します。火星は対向ハウスに対してだけでなく、それ自身から数えて4室目と8室目にもアスペクトします。木星は対向ハウスの他に、5室目と9室目にアスペクト、土星は対向ハウスの他に、3室目と10室目にアスペクトします。

○ソーラーアーク・ディレクション

ソーラーアークディレクション

 ちなみに、西洋占星術の技法、ソーラーアーク・ディレクションでは、出生図のMC(9室にある)にディレクションの土星がタイトにコンジャクションしています。この場合、「MCが表示する地位や立場に関する障害や困難がある」と解釈するのが一般的です。単に「地位や立場、人生の目的の変化」と解釈することもできますが、どちらにしても、良い方向で現れるか、悪い方向で現れるかを判断することは難しいでしょう。

 しかし、もしインド占星術によって、このときどのような時期なのかを知っていたら、このMCと土星のコンジャクションを次のように解釈できるでしょう。

 このディレクションで表示されている「地位や立場の変化、人生の目的の変化」は、9室の高度な精神性や宗教に関して生じます。しかも、それは精神性や宗教における障害などの否定的な意味合いではなく、精神的・宗教的な進歩や発展ということになります。

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●インド占星術によるホロスコープ解読のステップ 

 このようにして、インド占星術では、まず惑星がどのハウスを支配しどのハウス・星座に在住するか、どのようなアスペクトを形成しているか、どのようなヨーガを形成しているか等を検討することにより、その人の出生図で何が約束されているのかを理解します。

 次に、各種のダシャー・システムによって、その出生図で約束されている事象(カルマ)が発現するタイミングを知る。そして、トランジットにより、さらにタイミングを絞り込むのです。

※この他にも、アシュタカヴァルガや年間チャートのヴァルシャパラ(サイデリアル・ソーラーリターン)を使用したり、プラシュナ(ホラリー・チャート)、ブリグ・ディレクション(西洋占星術のディレクションと同じ)などを使用する占星家もいます。これらについては、私も必要に応じて使用しています。

文:Hada Yoji 編集:Charak

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