検証 占星術
グラフィック・エフェメリス
●Ggraphic Ephemeris
今回の検証 占星術では、コスモバイオロジーで使用されているグラフィック・エフェメリスの有用性を検証してみましょう。
皆さんは西洋占星術的な技法を使って人生全体の流れを読む時、どのような技法とどのような道具を使用されているでしょうか。出生図に進行図(セコンダリー・プログレッションまたはソーラーアーク・ディレクション)とトランジットをあわせた三重円? それとも出生図と進行図またはトランジットの二重円?
確かに、調べようとするその時期に、どのような事象や環境・心理状態が予想されるかを知るためには、セコンダリー・プログレッションやターシャリー・プログレッションをはじめとする各種プログレッション、ソーラーアーク・ディレクションをはじめとする各種ディレクション、あるいは、その対象となる時期に実際の天空を移動中の惑星を使うトランジットなどは非常に便利です。しかし、人生全体の流れを見渡そうとした場合、これらの技法を二重円や三重円を使って見ただけでは少しばかり使用しにくいところがありませんか?
そこで登場するのが今回ご紹介するグラフィック・エフェメリスです。これは、各種プログレッションや各種ディレクション或いはトランジットの惑星と出生図の惑星とが、人生全体の流れの中でいつ相互にアスペクトを形成するか、或いはプログレッションの惑星相互間やトランジットの惑星相互間のアスペクトが、いつ形成されるかを視覚的に一目で理解することが出来るという特徴があります。また、プログレッションやトランジットにおいて、惑星の速度がいつ遅くなる(止まる)のかも一目でわかります。なぜ惑星の速度が遅くなる(止まる)時期を知る必要があるかというと、各種プログレッションにおいて速度が遅くなる(止まる)時に惑星は大きな影響力を発揮するからです。この法則は、通常ほとんどの占星家に無視されているというより、知られていないのかもしれませんが、実は極めて重要な法則です。この辺の実際については検証の部分で取り扱うことにしましょう。
ところで、1枚のグラフィック・エフェメリスを使用して探すことが出来るアスペクトは特定の調波のアスペクトになります。コスモバイオロジーのようにハード・アスペクトを中心にアスペクトを探す場合は第8調波(45度スケール)を使用します。第8調波とは360度を8で割った45度の倍数のアスペクト、つまり0度(360度)・45度・90度・135度・180度のことです。より重要な出来事だけを表示させたい時には、マイナーなアスペクト(45度と135度)を排除して第4調波(90度の倍数。0度・90度・180度)か第2調波(0度と180度)を使えば良いでしょう。しかし私の実感としては、重要なことをもらさずピックアップし、重要でないことをピックアップしないという意味で、第8調波がもっとも良く作用しているように思います。
それから以前の「検証 占星術 ディスタンス・ヴァリュー」で取り上げたことのあるディスタンス・ヴァリューや、惑星の傾き(デクリネーション)をパラメーターとして使うのにもグラフィック・エフェメリスは非常に便利です。
それでは実例を使ってグラフィック・エフェメリスの有用性を検証してみましょう。
■【実例】重い喘息を患うS・Uさん -医学占星術(メディカル・アストロロジー)-
●ディスタンス・ヴァリュー
今回は1988年4月1日に、ある感情的なトラブルをきっかけとして重い気管支喘息を発症したS・Uさんについて検証しましょう。まずは、気管支喘息とはどういうものかについて、「東洋医学講座 第七巻 病因編」(小林三剛著、自然社)から引用します。
管支ぜんそく − p207
気管支ぜんそくは、呼吸困難を起こす代表的な病気で、主として息を吐きだすのが困難である。
発作が起こっていないときはなんの症状もなく、発作がはじまると顔を真っ赤にしてゼーゼーという音を発し、激しい呼吸にたえて、たいがいは起座呼吸の状態になる。 これは気管支自体に強い攣縮が起こるためである。
この疾病は、季節の変わりめや夜間、とくに明け方に呼吸困難が起こり、笛のような呼吸音と、ねばねばした半透明のタンがよくでる。
これは気管支平滑筋が攣縮し、さらに粘膜に浮腫が起こって気管支に狭窄を起こし、そのうえ粘液分泌が増加するために、呼吸困難を起こすためである。
下のグラフはS・Uさんのグラフィック・エフェメリスです。パラメーターは、以前「検証 占星術 ディスタンス・ヴァリュー」でも取り上げたことがあるディスタンス.ヴァリュー(以下DV)です。グラフ中の波線はセコンダリー・プログレッション(以下P2)の惑星のDV値を表し、横の一点鎖線は出生時(以下N)における惑星のDV値を表しています。
S・Uさんが重い喘息を発症した1988年4月初旬、P2海王星とP2月のラインとが正確に交わり同じDV値を示しています。これは以下のように解釈できます。
(1)悲しみ(海王星)の感情(月)[A]
中医学をご存知の方ならこのコンビネーションがなぜ喘息と関係があるのかすぐにおわかりいただけることと思います。中医学で七情(怒・喜・思・悲・憂・恐・驚)といわれるものがあり、これらの感情の働きはそれぞれ五臓(肝臓=怒、心臓=喜、脾臓=思、肺=悲・憂、腎臓=恐・驚)と対応しています。「悲しめばすなわち気が消える」という言葉がありますが、これは悲しむことによって肺気(生命エネルギー。ヴェーダではプラーナ)を消耗することを意味しています。それによって肺の力がなくなり喘息などの肺の病気になりやすくなるのです。よって彼女が喘息になった心因として、悲しみがあったことがわかります。
(2)胸部・肺(月)の衰弱・病気(海王星)[A]
医学占星術では月は胸部を表し、海王星は病気・衰弱を表します。したがって、この2つの惑星のコンビネーションは「胸部の衰弱・病気」を表します。
(3)胸部・肺(月)のむくみ・粘液過剰(海王星)[A]
月が胸部・肺を表していることは前述の通りです。そして海王星は水を象徴しています。そのため医学占星術では、海王星は水分が体内に滞留して生じるむくみや粘液過剰を表します。そして、月も水と関係がある惑星です。よってこの月と海王星のコンビネーションは「水分過剰、むくみ、粘液過剰」、特に「胸部のむくみ、粘液過剰」と解釈できます。アーユルヴェーダ(インドの伝承医学)の理論や中医学の理論によると、喘息の主な原因は胸部の粘液過剰です。具体的に言えば、気管支内側の粘膜がむくむことによって気管支が狭くなり呼吸がしにくくなることがもっとも主要な喘息の原因となるということです。
(4)P2冥王星とN天王星のラインとが正確に交わり同じDV値を示している。[B]
これは、コスモバイオロジーで脈拍や呼吸などのリズム(天王星)の大変化(冥王星)を表すとされるコンビネーションです。
(5)P2太陽とN太陽のラインとが正確に交わり同じDV値を示している。[C]
これは人生での重要な変化が生じるときの表示の一つです。
このようにディスタンス・ヴァリューにはS・Uさんが喘息になった時期とその事情がよく示されています。
●デクリネーション
次にパラメーターをデクリネーション(以下DN)にして1988年4月初旬の状況をさらに検証してみましょう。
波線はP2におけるDNを表し、横の一点鎖線は出生時におけるDNを表しています。
(1)P2アセンダントとP2天王星のコンビネーション[D]
このときP2アセンダントとP2天王星のラインとが正確に交わり同じDN値を示しています。アセンダントは自分自身・特に身体を表すもっとも重要な感受点です。そして天王星は突発的変化・緊張・反抗を表しています。したがって、このコンビネーションは身体(アセンダント)における突発的変化・緊張(天王星)を表し、周囲との緊張(天王星)が生じる状況や周囲に対する反抗的(天王星)な状況がS・Uさんの喘息の原因であったことがわかります。
(2)P2土星とP2海王星およびN海王星のコンビネーション[E]
P2土星とP2海王星およびN海王星のラインが交わり同じDN値を示しています。これは、慢性的(土星)な病気(海王星)や、身体組織(土星)の衰弱・崩壊(海王星)を表す典型的なコンビネーションです。
※ちなみに火星と海王星のコンビネーションも病気を表すコンビネーションですが、その場合は土星と海王星のコンビネーションとは対照的に、急性(火星)の病気(海王星)や感染症・流行病など血液(火星)の病気(海王星)、それらによる著しい体力(火星)の低下(海王星)を表すことになります。
(3)P2の火星とP2の月のコンビネーション[F]
P2火星とP2月のラインが交わり同じDN値を示しています。
これはイライラ・怒り(火星)の感情(月)と咳の連続 呼吸筋(火星)の無意識(月)の反応 によって胸部(月)に炎症(火星)を起こしていることを表しています。怒りの感情や咳の連続は気管支に熱を生じさせ炎症を引き起こします。そして炎症のために気管支にむくみが生じ、そのむくみによって気管支が狭くなるため喘息を悪化させるのです。
(4)P2太陽とP2月のコンビネーション[G]
P2太陽とP2月のラインが交わり同じDN値を示しています。P2のDVやDNにおける太陽と月のコンビネーションは人生上での大きな変化の時期を表しています。これはDVやDNを使って人生上での重要な時期を発見するのに非常に重要な手がかりとなります。太陽と月のコンビネーションだけではなく、同時に他の惑星のコンビネーションがいくつかできる時は特に重要な変化の時期を示します。この場合、そのコンビネーションを形成する惑星同士の意味合いに関連する現象が起きることになります。このケースでは、アセンダント(身体)と天王星(突然の変化)や土星(慢性)と海王星(病気)、火星(怒り・炎症)と月(感情・胸部)とのコンビネーションなどから、この太陽と月が示す人生上での大きな変化が健康問題として現われたことを読み取ることが出来きます。
●経度(通常のアスペクトの尺度)
最後に、経度(通常のアスペクトの尺度)をパラメーターとしてグラフィック・エフェメリスの有用性を検証してみましょう。以下のグラフは45度スケールで作成しています。よって、ラインが交わっている部分はそれらの惑星相互間において第8調波つまり45度の倍数アスペクト(0度・45度・90度・135度・180度)が形成されていることを表します。波線はP2の惑星を表し、横の一点鎖線は出生時(N)の惑星を表しています。
(1)P2天王星とP2太陽とのコンビネーション[H]
P2天王星とP2太陽のラインが正確に交わり、アスペクトが形成されていることを示しています。これは健康状態・活力・人生全般(太陽)について突然の変化(天王星)が起こる重要なコンビネーションですが、このケースではそれが健康問題として現われています。
(2)P2海王星とNアセンダントのコンビネーション[I]
P2海王星とNアセンダントのラインが交わり、アスペクトが形成されていることを示しています。これは身体(アセンダント)の衰弱・病気(海王星)を表しています。
(3)P2水星とN土星のコンビネーション[J]
P2水星とN土星のラインが正確に交わり、アスペクトが形成されていることを示しています。水星は肺・気管支を表し、土星は障害・収縮・狭さを表しています。よって、これは肺・気管支(水星)が収縮(土星)しブロック(土星)される状態を表しています。そして、この水星と土星のコンビネーションは、医学占星術では典型的な喘息のコンビネーションとされています。
そしてもっとも重要なポイントは、このP2水星の速度がほとんど停止状態になっているということです。このように、P2において惑星が速度を遅くしたり停止するときには、その惑星に関連して人生上での大きな変化が起こる傾向があります。これは、P2に限らずターシャリー・プログレッション(27日1年法)など他のプログレッションにおいても同様の傾向が見られます。その速度を遅くした惑星または停止状態にある惑星がアスペクトを形成するときには、そのアスペクトは非常に強力に作用することになるのです。このようにグラフィック・エフェメリスを使用すれば、惑星がいつ速度を遅くし、いつ停止するか、いつどのくらいの速度でアスペクトが形成されるかについても、視覚的に一目で見ることができます。
(4)P2金星とN火星のコンビネーション[K]
P2金星とN火星のラインが交わり、アスペクトを形成していることを示しています。まだ出生のホロスコープについては紹介していませんが、アセンダントは蟹座で、天秤座が4室に当たるため金星は4室の支配星になります。この4室支配の金星はS・Uさんの感情や胸部を表しています。よってこのP2金星とN火星とのアスペクトは、月と火星のコンビネーションと同様に、怒り(火星)の感情(金星)や胸部(金星)の炎症(火星)を表すことになります。
このようにP2におけるディスタンス・ヴァリュー、デクリネーション、アスペクトとそれぞれについてグラフィック・エフェメリスを使用して検証してきましたが、その有用性をある程度は理解していただけたのではないでしょうか。そしてP2のどのパラメーターを使用する場合でも、大きな現象が起こる時のオーブはほとんど0であるということもご理解いただけることと思います。これは別に特別なケースではなく、ほとんどのケースでは、このようにオーブは限りなく0に近いものです。例えば、アスペクトのオーブで30分もずれているような場合、本当にそのアスペクトが作用しているのかというのは非常に疑わしくなります。P2においてはオーブの広いメジャー・アスペクトよりもオーブの狭いマイナー・アスペクトのほうが優先されるのです。
ところで、実はこれらのグラフィック・エフェメリスからもっと具体的な状況を読み取ることも可能なのですが、今回は本人のプライバシーのためあえて触れませんでした。また、P2に表示されている時期の枠内において、トランジットを使用すればさらにタイミングを絞り込んだり、さらに具体的な状況を知ることも出来ますが、今回は前述の理由からこれ以上の詳細な検証はいたしません。
文:Hada Yoji 編集:Charak
▲
|