![]() カルマの法則![]() 偉大なヨーギー達の忠告いにしえの過去から現在に至るまで、偉大なヨーギー達(お釈迦様を含む)は、プララブダ・カルマによって生じる苦を喜んで受けとめること、そして、クリヤマナの領域で、良い行いをなし、慈善を行うことを忠告し続けてきた。 過去世から積み上げてきたプララブダ・カルマの果報として、不幸や苦しみに遭遇したとき、人はその苦しみから逃れるために、限られたクリヤマナの領域で、より悪い行いをなすのが一般的である。その結果として、来世経験することになるアーガミ・カルマはよりいっそう悪くなっていくのである。 例えば、プララブダ・カルマの結果として、誰かにひどく罵られたとしよう。その場合、あなたなら、身口意の行為、つまり身体における行動、口における言葉、意識における心の働きにおいて、どのような行為をなすであろうか? 心においては、怒りを生じさせ、それを何度も繰り返す。言葉においても、相手に言われたこと以上に罵り返す。ひどい場合は、暴力によって相手を傷つけることもあるかもしれない。 そうすると、あなたの身口意におけるカルマはどうなるだろうか? これを繰り返していると、プララブダ・カルマの果報として悪いことが生じ、1つのカルマが清算されたとしても、それに反応して、さらにその何十倍、何百倍の新たな悪いカルマを形成してしまうことになる。それゆえに、ますますこの苦しみの輪廻の世界へと縛りつけられることになるのである。 この場合、そのカルマはヴィカルマとなる。 よって、繰り返すが、偉大なヨーギーはプララブダ・カルマによる苦しみを喜んで受け入れるように忠告する。そして、唯一自由に行動が出来るクリヤマナの領域では、良い行いをなし、慈善をなすように忠告するのである。 そして、もしその忠告にしたがって、プララブダ・カルマによる苦を喜んで受け入れることができれば、そのカルマは魂を解脱へと導くアカルマとなる。 このカルマの仕組みを理解することが出来るのは、偉大なヨーギーか、偉大な占星家だけである。そして、インド占星術の真の存在意義の一つはまさにここにあると言っても過言ではない。 人間として生まれてきた以上、プララブダ・カルマによる苦しみは、多かれ少なかれ、必ず経験しなければならない。 この苦しみについて、仏教的表現を使うなら、それは四苦八苦と言うことができる。 それは人間が避けては通れない、生まれることによる苦しみ、老いることによる苦しみ、病むことによる苦しみ、死ぬことによる苦しみ、愛するものと離別することによる苦しみ、憎む人と会うことによる苦しみ、求めても得られないことによる苦しみ、心身が苦痛を受けることによる苦しみの、八つの苦しみである。 しかし、自己の心に打ち勝ち、神の叡智の高い段階に到達したものは、これらの四苦八苦を全く苦しみであるとは認識しなくなるという。 ![]() カルマの法則に基づく開運法それでは、具体的にはどのような行為をなせば良いのか? それは次のような行為である。 人生における良い時期に、自己の利益ばかりを追い求めず、権力に捕らわれず、傲慢にならず、良い行いをなし、慈善をなす。 人生における悪い時期には、落ち込まず、自己の悪いカルマが清算されることに喜びを見出す。 そして、悪い時期であっても、その苦しみから逃れるために、さらにカルマを悪くするような身口意における行為をなさず、自分のもっている限られた功徳を消耗するような行為、つまり自己の喜びを満たす行為も出来るだけ控える。 これはカルマの法則をしっかりと理解し、この輪廻の世界から脱却することの必要性を理解したものでなければ達成できることではない。 この状態に達したとき、その人は自己の心に打ち勝ち、神の叡智の高い段階に到達したと言えるのである。 ![]() 占星術で見るカルマの流れの傾向占星術では、いつの時期が良い時期かについて話をする。特に、ヨーガ・カーラカ(5室、または9室の支配星)の時期などがその典型的なケースである。しかし、人はヨーガ・カーラカのダシャー(惑星サイクル)が終わるとすぐに、よりひどい苦しみを経験するという傾向がある。 人間というものは、一般的に、自分の良い時期には、良い行いや慈善をなす代わりに、富を蓄積し、権力を得、傲慢になることが多いからである。 結果は遅く現われることもあるが、ほとんどのケースでは、すぐに現われる。そして、良い時期に良い行いや慈善をなさず、富の蓄積や自己の利益ばかり追求するものは、悪い時期には、より悲惨な結果となるのである。 ![]() ヴェーダに基づく苦の解消法 −心の変容− それでは苦しみとは一体何なのか? 偉大なヨーギーであってもプララブダ・カルマによる苦は経験する。しかし、偉大なヨーギーはそれを喜んで受け入れるため、そのカルマの果報による苦を経験している時でさえ、心において苦を感じない。 そして、もっとも偉大なヨーギーは、プララブダ・カルマによる苦を経験しているとき、それを自己の内側に内在している苦しみの因の減少であると捉えるがゆえに、ただ苦を感じないだけではなく、歓喜の状態に至る。 ようするに、苦しむべきプララブダ・カルマ自体を変化させることはできないが、それに対して嫌悪せず、それを自己の内側に内在する苦しみの因の減少として、喜んで受け入れることにより、心で苦を感じなくなり、さらに歓喜に至るわけである。 これが、まさに「心の変容」と呼ばれるもので、苦しみをストップさせ、喜びに変えるテクニックなのである。これは、われわれ凡人には理解しがたい深遠な法則である。しかし、その中にこそ、人が苦から解放されるための真理があるような気がしてならない。 ![]() インド占星術の役割インド占星術を学んでいてすぐに気づくことは、インド占星術は極めて実用的で現実的な占星術であるということである。それと同様に、その根底に流れるヴェーダ哲学も、極めて実用的で現実的な思想なのである。 ヴェーダでは、カルマという現実に目をそむけずしっかりと向き合い、それを乗り越えることを説いている。そこには、「現実逃避」のような、宗教に対する一般的なイメージとはかけ離れた真剣さがある。 その実践の結果、インドには解脱に到達した聖者が数多く存在してきた。そして、インド占星術は、その解脱したインドの聖者方が残された膨大な古典が基になっている占星術なのである。 ヴェーダにおけるインド占星術の役割は、『カルマを見るための目』であると言われている。カルマを見ることによって、この苦しみ多き輪廻の世界から脱却することの必要性を理解することがその究極の目的なのである。 ![]() |
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