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運 命 学

虚星を使う運命学の基礎理論

 一般にインド占星術や西洋占星術は、実際の天体配置(実星)を使い、紫薇斗数推命術・四柱推命などの中国運命学は虚星を使うといわれています。しかし詳細に検討すればインド占星術でも、ラーフ・ケートゥといった宇宙空間のあるポイントをあたかも実在する惑星のように使っています。さらに、ヴィムショタリ・ダシャーやヨーギニー・ダシャーといった惑星サイクルに至っては、実際の惑星運行との関連が、ほとんど見出せないシステムといえます。

 これらの実際の惑星の運行に依存しない運命学は、前回でお話した「天体配置による運命学の成立するメカニズム」の6.と7.が成立しないため、このメカニズムでは説明が不可能です。それでは、この虚星を使う占星術は、科学的裏付けどころか運命学の理論から見ても根拠の無い技法なのでしょうか。しかし、透派五術やインド占星術のダシャーシステムを使った人は、これらの技法は確実に(というよりも強力に)作用していることが実感できるはずです。またインド占星術ではダシャーシステムによる運命表示を、実星の運行を使うトランジットによる運命表示より重要視します。

 このようにインド占星術でも天体配置に依存しない惑星サイクルを重視するのは、それだけ惑星のサイクルが強力に作用するからです。それではなぜ虚星かそれほど強力に作用するのでしょうか。

運命現象の多重周期性

ダシャーサイクル
<ヴィムショタリ・ダシャー>

 ダシャーシステムや中国運命学の算出方法を検討すると、ある天文学的時空からスタートする特殊な周期テーブルを組み合わせて算出しています。

 この周期テーブルの組み合わせの最もシンプルなタイプは、ヴィムショタリ・ダシャーシステムのマハー・ダシャーの一惑星期の中にアンタラ・ダシャーという同様の惑星サイクルがあり、その中の一惑星期の中にさらにプラティヤンタラ・ダシャーという同様の惑星サイクルがあるという入れ子構造です。これは、数学的に表現すれば「フラクタル(註1)」という構造になっています。

 現代物理学では、非線形現象を多数組み合わせたシステムは必然的にエルゴート性を持つという仮説が、その数値計算の困難さ故に、何の裏付けも無く科学者の常識とされていました。しかし最新のコンピューターで、実際に膨大な数値計算を行うと多重周期性というエルゴート性(註2)とはまったく逆の性質が観察されました。

 この結果が意味するものは、科学的には予測不可能な非常に複雑な系(人間の運命などはその典型でしょう)であっても、その系には一定の周期で繰り返す種々の事象を多く含むため、その事象のサイクルを知ることが出来れば、事象の予測は可能であるということです。そして、その事象のサイクルは一般的な意味で計算不能であり、経験的に知るしかないということです。

 紫薇斗数推命術・四柱推命などの中国運命学は、中国の無数の英才や賢者たちが数千年の時をかけ、観察と分析によって人間の運命現象の多重周期性を、発見・整理していった集大成といえます。

(註1) フラクタルとは、非常に複雑な図形にもかかわらず、ある単純な規則的プロセスによって作られる図形につけられた名前です。岩山や海岸など、自然の細部をコンピューターグラフィックスで描く場合、フラクタル図形を生成する単純な規則的プロセスを、アルゴリズムとして使っています。

(註2) エルゴート性とは、ある系の初期状態に少しでも差があると、そのわずかの違いが時間の経過と共に指数的に増大していくような系が、必然的に持つと思われていた性質です。このエルゴート仮説によって、ボルツマンはボイルの気体法則のような巨視的性質を、気体の分子レベルのような微視的性質から理論的に導く統計物理学を確立しました。

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