HOME / 特別寄稿 / 運命学の基礎理論4

運 命 学

未来は決定されているか?

●物理史における未来観の変遷

 ガリレオから始まった西洋科学は、「極限」という数学的概念の進歩と共に、ニュートンやマクスウェルによって、万物の説明を可能とする壮大な科学体系に発展しました。この科学体系の基本的な式に「ニュートンの運動方程式」と、光も電磁波の波であることを示した「マクスウェルの方程式」があります。そして、そのどちらも数学的には微分方程式と呼ばれるものです。

 この物理現象の基本が微分方程式であるということは、物理現象を無限小の変化の積み重ねととらえ、あらゆる現象の変化は連続的に進むことを示しています。この科学体系ではいかなる遠い未来であろうと、世界は完全にその細部まで決定されています。

 この壮大な科学体系が、マックス・プランクにより発見された量子(プランク定数)によって、「古典物理学」へと転落していくのに立ち会ったアインシュタインは、その心情を「神がサイコロ遊びをされるとは信じられない。」という有名な言葉に残しています。

 古典物理学では原因と結果が一対一で対応しています。しかし量子力学はこの決定論的宇宙観に、原因に対する結果は(プランク定数の範囲内で)確率的に振舞うという修正を加えています。

●シュレーディンガーの猫

 20世紀になるまで量子力学が発見されなかったことでもわかるように、天体の運行を含む日常的な物理現象において、量子力学の影響が直接的に観察されることはありません。しかし微細な量子力学的現象を、日常的な物理現象にまで拡大する装置を用意すれば、量子力学の確率的影響が日常の物理現象に直接的に影響することになります。

 「シュレーディンガーの猫」という有名な思考実験は、そのような装置が引き起こすとてつもなく奇妙な世界を示し、今でもそのパラドックスに関する議論が続いています。しかしこの「シュレーディンガーの猫」という思考実験は、容易に以下のような二種類の異なった理論展開が可能です。

1.人間の思考は非常に微細な物理現象であり、量子力学的効果を直接的に受けているが、人間はまさにその量子力学的効果を日常的物理現象に拡大する精密な装置である。→したがって人間の未来は、決定されない部分を含んでいる。

2.人間の思考は物理現象を超えた霊的・神秘的な現象であり、この現象は物理法則を超えた現象である。そして人間はこの霊的・神秘的現象を日常的物理現象に拡大する精密な装置である。→したがって人間の未来は、物理法則によって決定されない部分を含んでいる。

 皆さんはどう思われますか?

●ラオの言葉

 この問題を考える参考として、インド占星術の大家でヨーガの修行者でもある、K.N.ラオ氏の言葉を引用します。

 占星術家も、占星術の限界について理解する必要があります。スリマッド・バガヴァータムには、このように書かれています。

「もし幸福と不幸の原因が惑星だとするならば、どうやって惑星が永遠の存在である魂に影響を与えることができようか? 惑星は、生と死の支配下にあるこの肉体にしか影響を与えることはできない。惑星が引き起こす苦痛は、肉体にしか降りかからない。魂は惑星の影響を超えている。だとすれば、人は怒る必要はないではないか。」

 占星術家が凶星の影響を読み取って、いくら恐ろしい予言と運気の変化を指定しても、真に宗教的な人の幸福には全く影響を与えません。

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