2003.03.09

アクエリアス談義(その3)

桃井 「それではお話の続きをお願いします。」

岩田 「牡牛座の時代や牡羊座の時代には、それに対応した古代文明と古代宗教が存在していたという見方は否定すべき強い証拠がないし、魚座の時代と共にキリスト教が登場して、それが魚座の時代を代表する世界宗教になったという考え方は、魚座の特徴とキリスト教の特徴を考えるとけっこう説得力がある。

 そしてその考え方を未来に展開すれば、アクエリアスの時代には、現在のキリスト教に代わって新しい世界宗教が登場するという主張は、それほど無理のあるアピールではないと思うんだ。」

桃井 「魚座とキリスト教に共通の特徴って、なんですか?」

岩田 「キリスト教が世俗の権力と結びつきどんなに堕落しても、修道院からはマザーテレサのように、地の果てまで伝道に赴き、自己犠牲と奉仕に生涯を捧げる人を、常に絶えることなく輩出したのが、結果的にキリスト教を世界宗教にしたんだと思う。自己犠牲と奉仕は魚座の重要な特徴だね。

 まあ宣教師の中には、西洋文明による世界支配がキリスト教の伝道には必要と考えて、侵略と植民地化の尖兵の役割を演じた人々も多いから、奇麗ごとだけではないけどね。

 面白いことにヒンドゥー教でも、キリスト教のローマ世界への広がりと平行するかのように、バクティ運動が広く受け入れられていった。バクティ運動では抽象化された教義よりも、人格化された神に対する愛と崇拝という宗教的表現が主流になる。

 バクティという言葉は、熱愛や信愛という意味だから、魚座の時代に入って、キリスト教が世界に広がると共に、インドでも愛の宗教が広がっていったことになる。インドではヴィシュヌ神またはシヴァ神に対する愛だけどね。」

桃井 「面白いシンクロ現象ですね。」

岩田 「とすれば、魚座の時代から水瓶座の時代に移行するにつれ、新しい宗教運動が広がっていくだろうというのは、必然的流れだね。もしかしたら、それは信仰のなくなる時代なのかもしれないけど。」

桃井 「大変な話になりましたね。」

岩田 「言い方を変えれば、新しい信仰の姿を世界に提示した宗教が、次の時代をリードしていくと考えていいかもしれない。その先駆けとして、研究日誌で取り上げた聖者方が登場しているのかもしれないね。」

桃井 「そうなんですか?」

岩田 「救済のヨーガの定義を考えてごらん。土星が高揚の星座かムーラトリコーナの星座に位置し、木星が9番目の一方的アスペクトをするというのがその定義だ。これは結果として、木星は双子座か天秤座に位置し、土星は天秤座か水瓶座に位置することになる。この双子座・天秤座・水瓶座に共通の要素を考えてごらん。」

桃井 「一つは、三つの星座がトリコーナの関係になってますね。」

岩田 「そうだね。トリコーナの関係にある星座は、結果的に同じエレメントに属するんだけど、この双子座・天秤座・水瓶座の三つは、いずれも風のエレメントに属している。つまり、救済のヨーガは風のトライアングルで形成されるヨーガなんだ。

 魚座を支配する木星が敵対星位の双子座や天秤座に入って、ムーラトリコーナや高揚の星座で力を発揮する土星に一方的アスペクトを送るという救済のヨーガの構造は、木星が支配する水の星座の時代が終わり、土星が支配する風の星座の時代が始まることを象徴的に表しているという解釈も可能だ。

 象徴と言えば、キューピットとアフロディテが変身した2匹の魚が、離れないように帯で縛りあっているという魚座の象徴から、天に上げられた賢き美少年のガニメーデが、神の英知の源泉となる水瓶を持つ姿という水瓶座の象徴への移行は、情の絆に縛られ愛欲に耽る時代から、人が英知によって神の世界に至る時代になるのかもしれないね。」

桃井 「12星座の神話って、なかなか意味深い象徴ですね。」

岩田 「まあ12星座の神話は、占星術の奥義を象徴化したものだから当然と言えば当然だ。インド占星術でも神話によって占星術の奥義が象徴化されている例が多いね。だから占星術技法に内在する理論的構造を読み取る数学的センスと、神話に象徴された占星術の奥義を読み取る人文学的センスの両方が、占星術のオリジナルな研究を進めていくためには必要なんだ。

 アクエリアスの時代に信仰がなくなるとは思わないけど、木星が支配する水の星座の時代と土星が支配する風の星座の時代では、信仰も大きく変化していくんじゃないかな。自分を救世主として祭り上げていた教団を解散したクリシュナムルティなんかは一番過激な例だと思うけど、ラーマクリシュナにもこんなエピソードがあるんだ。

 神についてラーマクリシュナに質問した人に、熱心な信者が「この人のおっしゃることを信じなさい! ただ信じることです。」と言ったら、ラーマクリシュナは「お前はなんて人間だ! まだ本当に信じられないうちに無理に信じろだなんて。偽善だよ! お前はペテン師だよ!」と大変な剣幕で叱りつけた。その人は恥じ入って困惑の極に達し、周りの人は目をそらすほどだったそうだ。

 ダライラマ14世も、ダライラマという名は私の職務を意味する称号であり、自分自身は仏教僧たらんとする一チベット人であると言っている。救済のヨーガを持つ聖者方は、アクエリアスの時代の先駆けとなる土星に特徴付けられた精神性を持っているといっていいんじゃないかな。」

桃井 「土星は政治形態では民主主義をあらわすと、ラオ先生の本にも書いてありましたけど、納得できますね。」

岩田 「カースト制度の中で育ったインド占星術では、土星を奴隷階級に割り当てているけど、社会の枠組み自体が変われば、具体的惑星の象意も新しく解釈する必要があるという一つの例だね。

 土星は社会占星術だけでなく、スピリチュアル・アストロロジーにとっても実に興味深い。救済のヨーガの研究で、土星について一段理解が深まった気がするけど、まだまだ研究が必要だと思う。」

桃井 「今後の発表を楽しみにしてます。」