2003.08.26

出生時刻談義(出産と開運術)

桃井 「岩田先生、出産の時間を選ぶことによって、生まれてくる子供の運勢を変えるのは可能だと思いますか?」

岩田 「それは時々質問されるテーマだけど、『今生の出生時間とは前生のカルマの投影されたものである』というインド占星術の立場で考えるなら、どういう結論になるか考えてごらん。」

桃井 「はい・・・、もし前生のカルマによって、その人の生まれる瞬間の惑星配置が決定されるなら、出生の時間をコントロールするのは不可能なんじゃないんですか?」

岩田 「そうだね、生まれた時の惑星配置が良いから、その人は運勢が良いという言い方は、天体の惑星配置が原因で、その人の運勢が結果であるかのような印象を与えるけど、前生のカルマによって運勢の良い人は、天体で良い惑星配置が形成される時に出生するというのが、カルマの法則と輪廻転生を前提とするインド占星術の基本的スタンスだ。

 そのスタンスから言えば、桃井君の言うとおりに出生時刻をコントロールするのは不可能ということになる。でも『生まれてくる子供のカルマの範囲内でのみ、出生時刻をコントロールすることは可能である。』というのが、より正確な表現だろうね。」

桃井 「それは占星術を使った開運術で、ある程度まで子供の運勢を改善するのは可能だということですね?」

岩田 「それは、開運術という分野それ自体がインチキでない以上、可能ということになる。
 しかしカルマの法則を無視したようなうまい話は、『その人の生まれ持った功徳を短期間に使い果たさせる危険な開運技法』、『偶然の誤認から発生した間違った思い込みによる、ほとんど無意味な開運技法』、『巧妙な詐欺の手口』のどれかに属するんじゃないかな。

 でもカルマの法則と輪廻転生のメカニズムを考えれば、受胎する瞬間にその子の魂は母体に飛び込んで来るわけだから、このタイミングに開運術を使うなら、受胎する魂に対する選別になる。

 この場合は、生まれてくる子供の運勢はかなり大きく変えることが可能だとは思う。でも、これは運勢の良い子供を『選別』する開運術であって、子供の運勢が改善されるわけではないけどね。」

桃井 「『選別』って、あまりいい印象がしませんね。」

岩田 「もし親が利己的な理由で、運勢の良い子供を『選別』する開運術を使うなら、当然受胎時に飛び込んでくる魂も、運勢が良く利己的な魂になるだろうから、そのような開運術ではたして親子が幸福になるかはたいへん疑問といえる。」

桃井 「エゴによって他におこなった行為は、他がエゴによって自分におこなう行為として返って来るという、典型的なカルマの法則ですね。」

岩田 「だから子供に関して幸福を得る最も確実で強力な開運術は、日々の生活の中で自分と縁深き人々に対して親愛と敬意をもって献身することになるけど、どうしても人はうまい話の方が好きだから、それに付け込む人も世の中に絶えないんだね。

  インド占星術は、高価な宝石や開運術を売る手段としても使えるけど、カルマの法則による輪廻転生という、インド宗教の根本的な宇宙観、そしてそれを超えた解脱という概念、それらに多くの人々を誘うためにあるというのが、羽田先生の考え方だったし、私もその通りだと思う。」

桃井 「岩田先生のよく言われている、東西占星術研究所の基本スタンスですね。」