2003.10.16

続・トロピカル12星座とは何か?

桃井 「岩田先生、『トロピカル12星座の本質は12ハウスである』という談話室の記事は反響があったみたいですね。あの後、東西占星術研究所へのアクセス数が、平均的アクセス数の2倍以上に増える日がありますから。」

岩田 「常連中心で、ほとんど変化の無い東西のアクセス数が変化するのは、それなりに反響があったんだろうね。まあ、あの内容を談話室で取り上げるのを決めたとき、『論争の火種を投げ込むことになるかな・・・。』という思いはあったのは確かだけど。」

桃井 「そうですね、トロピカル12星座VSサイデリアル12星座の争いというのは、占星術界の1番大きな論争テーマと言ってもいいですから。」

岩田 「科学的という権威を着た未熟な学問的方法論と、当たるから正しいという理論的考察のない信念が生む不毛な論争から、占星術を学び始めた人を救い出したかったし、もっとクリエイティブな研究や論議が生まれてほしいという思いもあって、あの見解をひっそりと公表してみたけど、すこしは意義があったみたいだね。

 それなら、前回は話さなかったトロピカル12星座に関する見解を、もう一つ公表してみようか。」

桃井 「えっ、トロピカル12星座に関して、まだ独自の見解があるんですか?」

岩田 「独自の見解と言っても、世界の西洋占星術やインド占星術の研究発表総てを、把握している訳ではないから、すでに同じ見解が発表されている可能性はある。だから、同じ見解が発表されているのを知ってる人がいたら、東西占星術研究所にメッセージを送ってほしいね。

 前回は、トロピカル12星座における春分点の役割が、アセンダントを1室の起点とするハウス・システムにおけるアセンダントの役割と、ほぼ同等の理論構造になっているという話だった。そこで今回は、春分点が占星術で使う仮想惑星とほぼ同等の理論構造になっているという話をしようと思う。」

桃井 「仮想惑星というのは、ラーフやケートゥのような虚星のことですか?」

岩田 「そうだね、ラーフやケートゥを地上から見れば、黄道と白道の交差する点だし、太陽系という視点から見れば、月が地球を公転する軌道と地球が太陽を公転する軌道が交差する点だ。
 したがってラーフやケートゥは物質的実体のある惑星ではなく、軌道交点という天文学的特異点の一つでしかない。

 しかし『科学的で進歩的な西洋占星学』でもラーフをドラゴン・ヘッドという名称で使用し、他のアスペクトを考慮するなど、一般の惑星とほぼ同等の扱い方で使っている。
 科学的占星術を標榜してサイデリアル12星座を否定するような占星学研究家でも、ドラゴン・ヘッドを使っていたりするので、このような仮想惑星を使う科学的根拠を聞いてみたいと思う。
 でもそのこと自体は、ドラゴン・ヘッドという仮想惑星が、実占技法として無視できない力があるのを、『科学的占星学』でも認めていることにはなるね。」

桃井 「先生、ちょっと意地悪になっていますね。」

岩田 「そうだね。だからこのテーマについて話すのを避けていたんだ。どうしても論争モードに入ってしまうから。それじゃあ、しっかり反省して論証モードにもう一度入ることにしょう。

 ドラゴン・ヘッドやドラゴン・テイルは、月の公転軌道と地球の公転軌道という二つの軌道の交差する点という理論的な規定をされている。 そしてもう一方の、春分点や秋分点も、地球の自転で規定される天の赤道と地球の公転軌道で規定される黄道の交差する点として理論的規定をされている。

 これはドラゴン・ヘッドとドラゴン・テイル、春分点と秋分点という二組の概念が、天体の軌道交点という同等の理論構造で規定されているということだね。言葉を換えて言うなら春分点や秋分点は、仮想惑星として使用可能なドラゴン・ヘッドやドラゴン・テイルと同等の、天文学的特異点ということになる。」

桃井 「ふぅ、アセンダントと春分点が同じという見解の次は、ドラゴン・ヘッドと春分点が同じという見解ですか・・・・、まいりましたね。」

岩田 「つまり三つの見解、
1.アセンダントと春分点を同等に扱える。
2.ドラゴン・ヘッドと春分点を同等に扱える。
3.ドラゴン・ヘッドは惑星と同等に扱える。

 この三つの見解を連結すると、アセンダント、春分点、ドラゴン・ヘッド、惑星という四つのカテゴリーを、同等に扱うことが可能な概念が存在するということになる。
 少々粗っぽいけどアセンダントや春分点も、ドラゴン・ヘッドと同様に仮想惑星という概念によって、占星術で使う7惑星と同等に扱うことが可能ということになる。より汎用性のある表現としては、『占星術的な感受点としての天文学的特異群に、春分点も属している』ということになるのかな。」

桃井 「アセンダント、MC、春分点、秋分点、ドラゴン・ヘッド、ドラゴン・テイル・・・。これらが、太陽・月・火星・水星・木星・金星・土星と同じに扱える仮想惑星として理解することが可能というのは、これまたビックリの見解ですね。」

岩田 「しかし西洋占星術でも、アセンダントやMCに対して惑星と同様のアスペクトという概念を使ってホロスコープ・リーディングをしているわけだから、同等の理論構造を持つ春分点や秋分点にだけ、アスペクトの使用を禁止する理論的根拠はないと思う。
 もっとも、それが実占的技法として有用な使い道があるかどうかは、今後の研究課題だけどね。

 また西洋占星術には、出生時刻が不明な場合に使われる『日の出図』というホロスコープ作成法があり、これはアセンダントと太陽の位置を一致させた日の出の時刻でホロスコープを作成する方法だ。
 これは見方を変えれば、太陽を出生時のアセンダントの代りに第1室の起点として使用していることになる。つまりこれは太陽のような実在する天体も、アセンダントやMCのようにハウス・カスプのような役割も果せるという、逆の例になるね。」

桃井 「これはもう、これまでの惑星の観念が崩壊しますね。」

岩田 「しかし、これはアセンダントやドラゴン・ヘッドに対するアスペクトを容認することの理論的帰結だ。したがってドラゴン・ヘッドのように実体のない惑星は、占星術に使うことを認めないし、もちろん惑星とアスペクトすることも認めないという『科学的』立場に立つならこれまでの観念は安泰かもしれない。

 しかし理論的整合性を求めるのなら、ドラゴン・ヘッドに対するアスペクトを認めないという理論的立場は、アセンダントやMCに対するアスペクトも理論的に認めることが出来ないということは、すぐに分かることだ。でも『科学性』のために、果してそこまでの犠牲に耐えられるかということになる。」

桃井 「それは、淋しい占星術になりますね。話を戻しますが『春分点はドラゴン・ヘッドど同様の仮想惑星である』という見解と、『トロピカル12星座の本質はハウス・システムである』の関係が、ピンとこないというか、よく分からないんですが。」

岩田 「それは『春分点イコール仮想惑星』という見解が、サイデリアル12星座にトロピカル12ハウスを統合した占星学体系を構築するために必要な部分的素材で、まだ全体が見えないから、ピンとこないんだろうね。」

桃井 「それじゃあ、まだ公表していない見解があるんですね?」

岩田 「まあ、そういうことになる。しかしこれだけの公表をすれば、本質的な科学的センスを持つ占星学研究家なら、西洋占星術とインド占星術を統一的に取り扱える占星学体系を構築できると思うね。
 まあ、そういう期待もあって今回、これらの見解を公表してみたとも言える。」

桃井 「それじゃあ、残りは公表はしないんですか?」

岩田 「それは『その時』が来れば、自然に公表してしまうことになるんだろうね。今回の公表も多分に『公表する時が来た』のかな、という感覚でやっていることだから。」

桃井 「それじゃあ、このテーマの続きが談話室にあるかもしれませんね。」