2003/10/19 (日)

コメントが転送されてきました。

桃井 「岩田先生、ほかの占星術ホームページに投稿された談話室についてのコメントを、そのHP管理人さんがこちらの参考にと転送してくれました。これがそのメッセージです。」

◇メッセージのパート1◇
 西洋占星術のウラニアン学派では、春分点は、エリーズポイント(牡羊ポイント)と呼ばれています。このエリーズポイントは、肉体を表すポイント(アセンダント同様)として、重視されており、ミッドポイントに含めて使用されています。
 これと同じことを先生が自ら発案したのでしたら、それはそれですばらしいことだと思いますが、ウラニアン学派では、何十年も前から、研究され、ふつうに使用されているポイントなので、これを岩田先生の独自見解というには無理があるような気がします。

岩田 「そうか、ウラニアンやマンディーンは知識の空白エリアだったから、これは知らなかったね。ウラニアン学派では春分点を、肉体を表すポイントとして使用しているというのは大変参考になる。それにウラニアン学派が実占で春分点をアセンダントと同様に使っていると言う事実は、『トロピカル12星座イコール12ハウス』という見解が実占での使用に耐えうることを証明してしくれているとも言える。

 インド占星術の研究を進めながら、一人で西洋占星術の全エリアをカバーするのは大変だから、こういうコメントを読めるのは、大変有難いね。」

桃井 「コメントには、こんな部分も含まれていますよ。」

◇メッセージのパート2◇
牡羊座は1室、牡牛座は2室、・・・、魚座は12室に対応するという考え方は、西洋占星術とインド占星術の両方に共通する基礎理論で、ふつうに占星術を勉強した人であれば、誰でも知っている内容なので、特に目新しい独自の見解ではないと思います。たとえば、マンデーン占星術においては、春分点をアセンダントとして展開し、12星座を12ハウスに対応させて、地球全体に関わる出来事を読み取ります。
 これについても、今までに占星術の教本で、このような内容を読んだことがなく、自分で思いついたことであれば、それはそれですばらしいことだと思いますが、占星術研究所としては、少し勉強不足なのではないかと思います。

岩田 「この『マンデーン占星術は、春分点をアセンダントとして展開し、12星座を12ハウスに対応させて、地球全体に関わる出来事を読み取ります。』というのは、大変参考になるけど、その前半分の部分はこちらの見解を理解していないように感じられるね。

 『12星座を12ハウスに対応させ』というのと、『トロピカル12星座は、星座ではなくハウス』というのは一見似ているようだけど、『星座ではなくハウス』という言葉には、
『トロピカル12星座も一応使用している、高揚や減衰、ミューチュアル・レセプションなどの星座に依存する占星技法は、サイデリアル12星座と重なる部分でしか、しっかり作用していないのではないですか?』
『12星座の支配星が新発見したトランスサタニアンと置換え出来るのは、支配星が支配星として作用していないからではないですか?』
『支配星が切り替わった時間はいつですか?そして、支配星の切り替わる前と切り替わりの直後でのホロスコープ・リーディングを、西洋占星術はどう処理したのですか?』
等の問いかけを含んでいるんだ。

 このコメントに即して言えば、『東西占星術研究所は、トロピカル12星座は星座ではなくハウスという見解と、トロピカル12星座と12ハウスが対応するという見解は、表面上の使い方は似ていても、その後の占星術技法の展開において大きな差の出る本質的理論構造の違いがあると考えています。』ということになる。

 しかし、この限られたコメントの内容だけでは、こちらがコメントの真意を把握していないという可能性もあるね。」

桃井 「そうですね、もう少し詳しい見解を聞きたいですね。」

岩田 「でも、おかげでウラニアンとマンディーンの資料をサーチして、理論を拾う必要があることがわかったから、後はこちらで研究することかも知れないね。まあ、もっと詳細に教えていただけるならうれしいけどね。

 というのは、東西占星術研究所の研究スタンスは、海外で発表された研究をいち早く翻訳し、国内に欧米での研究という権威で紹介するのが学問研究という、明治以来の日本の学問研究スタンスとは違うからね。

 私の研究スタンスは、一見複雑で難解な占星技法の中に内在する理論構造を、洗練された理論体系として認識し、アクエリアス時代の高度に統合された占星術体系を垣間見てみたいという趣味的なものだから、どちらが先とかオリジナルとかの先陣争いにはあまり深入りしたくないし、他の優れた見解を聞くのはいつの時でも楽しみだからね。」

桃井 「今でもインド占星術のほかに、中国占星術や密教占星術、それにハーフ・サムやハーモニクスという西洋占星術技法と、研究課題が多いのに、ウラニアンとマンディーンですか・・・。」

岩田 「どうも、サビアンとウラニアンは手をつける気がしなくて、マンディーンもあまり興味がないから、ほって置いたんだけど、そろそろやる時期ということかな。」

桃井 「東西占星術研究所のホームページ更新も忘れないでくださいね。」

岩田 「・・・・・。」

岩田 「せっかくメッセージで、ウラニアン学派では春分点もアセンダントと同様に身体を表示する天文学的特異点として採用していると教えてもらったので、これについて少し考えてみよう。

 占星術技法の理論的バックグラウンドに関する思索は、占星術技法の正しい使い方を直感的に理解する力を高め、意外なほど実占能力が短期間にアップするからね。

 さて、占星術で使われる天文学的特異点としては、ラーフ&ケートゥ、春分点&秋分点、アセンダント&デセンダント、MC&IC、がメジャーな顔ぶれで、あとは若干マイナーな特異点であるリリスとかがあるね。」

桃井 「リリスってなんですか?」

岩田 「月の軌道で地球から最大距離となるポイントで、天文学的には『月の遠地点』と表現される。日本では『リリス』、『リリト』、『ブラック・ムーン』などの名称が使われているのかな。

 これらの天文学的特異点の中で、春分点とアセンダントに共通する理論要素があれば、その要素が身体を表示する本質的な天文学的要素という推論が可能になる。」

桃井 「この天文学的特異点のリストを見ていると、春分点→アセンダント、夏至→MC、秋分点→デセンダント、冬至→IC、という対応があるように感じるんですけど、どうでしょうか?」

岩田 「そうだね。それは陰の極まりである『冬至→IC』を起点として、陽の極まりである『夏至→MC』に至り、再び陰の極まりである『冬至→IC』に回帰していく陰陽の周期的変化として同一カテゴリーに分類することが可能だと思うよ。

 その一日サイクルが『アセンダント→MC→デセンダント→IC』で、一年サイクルが『春分点→夏至→秋分点→冬至』になっているんだろうね。」

桃井 「陰陽の循環というのは、中国的な見方ですね。」

岩田 「中国の宗教・哲学・占術を貫く、陰陽五行という世界観はたいへん興味深く、美しい理論構造を内在していると思う。それだけでなく強力な思索のツールとして使えるし、応用できる領域も広いと思うよ。

 西洋占星術の優れた未来予測技法に『1日1年法』があるけど、この未来予測技法は1日サイクルの中に1年サイクルが内在しているという、フラクタル的な理論構造を根拠としている。
 実占における1日1年法の有効性の高さから考えると、『春分点→アセンダント』という対応関係はかなり強力に作用しているんだろうね。」

桃井 「羽田先生のチャート・リーディングにも使われていますから、『1日1年法』はインド占星術から見ても信頼度が高い占星術技法なんでしょうね。」

岩田 「羽田先生はトロピカル12星座に対しては完全否定に近かったけど、星座が関係しない西洋占星術の技法について熱心に検証しておられ、特にプログレスやトランスサタニアンの使用には積極的だった。でもトランスサタニアンを星座の支配星として使うことは問題外と考えておられたね。
 そういう意味では、東西占星術研究所はインド占星術派の研究所というよりも、羽田先生の代からサイデリアル占星学派に属する研究所であるといえるんだろうね。

 話を戻すと、まあウラニアン学派が春分点とアセンダントを同じ目的で使用するのは納得できるよね。でも、どちらも身体を表示するという使い方はどうしてかな、ということになる。」

桃井 「それはちょっと見当がつきませんね。」

岩田 「この辺になると、難易度が高いテーマだから私も今後の思索テーマだと思っている。でも占星術的に身体を表す惑星は『地球』であるという見解。そして『身体を表す惑星である地球』は、ホロスコープ上では太陽やアセンダントの動きに投影されているという見解が、思索のポイントになるとは思っている。」

桃井 「地球という惑星の運行も、そういう形でホロスコープに登場しているんですね。」

岩田 「地球の自転運動は、ホロスコープ上ではのアセンダントの移動として投影されているから、より正確に言えばホロスコープを作製した地表位置という天文学的特異点が、ホロスコープ上では太陽やアセンダントの動きに投影されているという表現だろうね。

 でもサイデリアル12星座とホロスコープ作成地点の間に立ち塞がる『惑星地球』の位置はICで表示されるから、ホロスコープ上でICは地球のサイデリアル12星座における位置を表すという見解も成り立つ。

 この辺は、もう一度全体的な概念の整理をする必要があると思っているんだ。」




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