2004/07/05 (月)

メッセージが来ました。

桃井 「岩田先生、こんなメッセージが来てますよ。」

Sさんのメッセージ
 いつもページの更新を楽しみにしている、東西研究所ファンのものです。最近カルマについて考えさせられることがあり、このHPを読み直していました。いくつかわからない点を発見しましたので、質問させてください。談話室などで取り上げていただけるとうれしいです。
1.
カルマの2つの分類の記事について
完全な悟り と 最終の解脱 の違いが分かりません。そもそも解脱とは何を意味するのでしょうか?
2.
カルマにおける4つの要素の記事について
人間以外の転生において積んだカルマが残っている場合、どのようにしても今生において解脱することは不可能なのでしょうか?
3.
インドの聖者さんたちは、「神の恩寵によりあらゆる運命的なものは変更される」と教えておられるようですが、この恩寵もカルマの法則内での出来事なのでしょうか?
インドで出会った占星術師の人から聞いたところによると、恩寵を得るコンビネーションがあると言ってました。それゆえに恩寵もカルマの範囲内だと言ってました。それは本当なのでしょうか?
彼から聞いたコンビネーションの一つは、「9室(グル)の支配星が8室(生命)にアスペクトすると一生を通じて神の保護下に置かれる」とか言ってました。確かに、有名なインドの聖者たちのチャートにはこのコンビネーションがあるのでちょっとびっくりしてたんですが、ちょっと単純すぎるのでどうなのかなあと思ってます。


岩田 「たいへん面白いメッセージだね。
質問1と質問2は、なかなか鋭い質問だと思う。
それから、質問3に書かれてるインド占星術の技法は、面白い検証が出来るんじゃないかな。」

桃井 「確かに、私も回答が聞きたくなる質問ですね。」

岩田 「質問3.については、別の機会に実際の聖者のチャートを検証することにして、ここでは質問1.と質問2.について、聖典の記述や聖者方の言葉から、参考となる概念を要約して話すことにしよう。それ以上のことを言える立場ではないからね。」

桃井 「はい。」

岩田 「解脱というのは、ヒンドゥー教・仏教・ジャイナ教などの、インド宗教に共通する宗教概念で、輪廻に束縛された世界からの解放を意味している。しかし、ヒンドゥー教・仏教・ジャイナ教で世界観や宇宙観は微妙に異なるし、その世界から解放された状態に関しても微妙に定義が違う。

 極端な話、動物の世界をずーっと生まれ変っていた生命体が、動物に輪廻転生し続けるカルマから解放され、人間の世界に生まれ変わるのも、動物の世界からの解脱ということが出来る。」

桃井 「それじゃあ、解脱というのはその宗教が定義している。輪廻の世界の数だけあるんですね。」

岩田 「だから、人間のカルマを超えて天の神々の世界に行く解脱もあれば、天の神々を超えた覚醒者の意識状態に、到達する解脱もあると言われているんだね。」

桃井 「それじゃあ、最終の解脱というのは、その宗教が持つ世界観の中で、最高の世界に行くことなんですか?」

岩田 「それを最終の解脱とする立場もあるし、最終の解脱とはそういう言葉や概念を超えているのだから、最終の解脱という言葉自体が意味を持たないという立場もある。

 でも悟りや解脱というのは、頭で考えるものではなく、自分を束縛している間違った欲望や観念の本質に関して洞察や経験を深め、それを一個一個超えていく地道な作業によって、徐々に体得していくものだと思う。

 最終の解脱とか、完全な解脱とか、最高の解脱とか、いくらでも崇高なイメージを持つ言葉を作れるけど、そういう観念的な言葉に意識を高揚させるのは、厳しい瞑想修行の励みにはなっても、悟りや解脱を進めるためには、プラス・マイナスの両面があると思うよ。

 だから解脱や悟りに惹かれるなら、そういう言葉の意味や定義に必要以上にこだわらないで、カルマの法則に基いて自己を律するとか、自分の行動・言葉・心をカルマの法則に基いて観察し続けるとかの、地道で堅実な修養の道を進むことをお薦めするね。

 そのプロセスの中で、悟りや解脱についての考察を進めていくなら、観念的に意識を高揚させるだけの、実りの無い宗教にひっかかることもないと思うよ。」

桃井 「質問の2については、どうでしょうか?」

岩田 「これも難しい質問だね。転生の中で自然と全てのカルマを経験し尽くして解脱される方もいるだろうし、瞑想によって人間以外の意識を移し、瞑想によってそのカルマを消滅させて解脱する方もいると思う。」

桃井 「瞑想って、そういうことも可能なんですか?」

岩田 「チベット密教では、そういった高度な瞑想技法が発達しているじゃないかな。チベット密教の聖者方の伝記を読んでいると、そういう印象を受けるね。でも本当のところ、解脱とか悟りという言葉は、あまり口にしたくないので、このへんにしておこう。」

桃井 「はい。
それじゃあ、質問3の検証を楽しみにしていますから、忘れないでくださいね。」

岩田 「今は忙しくて、なかなか時間がとれないけど、私もどの程度使える技法なのか興味はあるから、いずれ談話室で検証結果が話せると思うよ。」





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