2004/09/11 (土)

続々・東西ハウス談議(サビアン占星術、etc.)

岩田 「今日は、『サビアン占星術は360ハウスのハウス・システムである。』というネタで話そうと思うんだ。」

桃井 「ふぅ・・・。
それはもう、次から次とビックリ箱を開けていく感じですね。」

岩田 「サビアン占星術は、トロピカル12星座の360度に対して、1度ごとにサビアン・シンボルという特別な意味を与えている。つまりサビアン占星術は、360のサビアン・シンボルで構成されている。

 だから、『サビアン占星術は、春分点を起点として、サビアン・シンボルという360のハウスで構成した、1ディグリー=1ハウスのハウス・システムを採用した占星術である。』という見方も可能だ。

 ところが、春分点は黄道上を72年で約1度、つまり1年で約50秒のスピードで、太陽の移動方向とは逆方向に移動してる。

 したがって、もしサビアン・シンボルが銀河系恒星群の位置とリンクしたマイクロ・ゾティアック、つまりその本質が微細な星座区分であるなら、トロピカル12星座上のサビアン・シンボルは、100年も経たないうちに完全にマイクロ・ゾディアックと一致しなくなる。

 つまり、1925年にエリス・フィーラーによってリーディングされたサビアン・シンボルが、1973年の『AN ASTROLOGICAL MANDALA』という著作で、ディーン・ルディヤーによってサビアン占星術として確立され、2004年の現在でも実占技法として使用可能であるならば、春分点を起点とするハウス分割システムであるトロピカル12星座も、天文学的星座とのズレに関係なく、実占的に使用可能なの占星技法ということになる。

 これを整理すると、
1.
 トロピカル12星座が採用している、12星座の起点としての春分点は、本質的にはアセンダントとノードの性質をミックスしたような、天文学的理論構造をもつ占星術的特異点である。
2.
 そしてトロピカル12星座に限らず、春分点を360ハウスの起点として採用しているサビアン占星術が1925年から2004年の現在まで有効に作用していると仮定する。
3.
 そうであるなら、トロピカル12星座がサイデリアル12星座とまったく重ならなくなるまで、春分点が移動しても、トロピカル12星座は12ハウスとして十分実占的に作用すると十分予測出来る。

ということだね。

 だたし、トロピカル12星座の本質が、トロピカル12ハウスであるとすれば、当然星座の支配星という概念はトロピカル12星座では機能しないし、支配星同士が星座交換するミューチャル・レセプションも、当然のことながら機能しないことになる。

 サイデリアル12星座とのズレが増大するにつれて、支配星という概念が機能しなくなっているから、トロピカル12星座は新しく発見した惑星を簡単に12星座の支配星として変更出来ると考えれば、西洋占星術では星座の支配星が入れ替え可能である理由も理解しやすいんじゃないかな。

 でも以前の談話室で話したようにインド占星術で使う『ハウスのカラカ』という概念を使えば、トロピカル12星座の支配星は、トロピカル12ハウスのカラカ、つまり表示体として機能するから、実占的に無意味というわけではない。」

桃井 「お話を整理してみますと、

 サビアン占星術が現在でも実占で使用可能なら、アヤナムシャが30度以上になる遠い将来でもトロピカル12星座は使用可能ということですね。

 またそうであるならば、トロピカル12星座が星座ではなく、天空を12ハウスに分割するシステムということになります。

 その場合、トロピカル12星座の本質はトロピカル12ハウスなので、サイデリアル12星座と別概念だから、二つは共存可能な占星術技法ということなります。

 その場合は、トロピカル12星座の支配星は、トロピカル12ハウスのカラカ(表示体)として作用するけど、星座交換のような占星技法は実占的には作用しない、ということになるんですね。」

岩田 「うん、今日の桃井くんは意識がクリアだね。

 インド占星術では星座交換を、アスペクト以上に重要な惑星同士のコンビネーションとして使用するし、実占的にもあざやかな検証例がいくらでもある。

 インド占星術では、星座交換を教えなかったら入門書は書けないけど、西洋占星術の入門書では、星座交換(=ミューチャル・レセプション)に関する実占的な説明を見たことが無いから、実占的価値をほとんど認めていないんだろうね。

 現在では、サイデリアル12星座とトロピカル12星座が重なる領域は約6度くらいだし、天王星を水瓶座、海王星を魚座、冥王星を蠍座と、新しい惑星を発見するごとに、どんどん12星座の支配星を入れ替えているから、西洋占星術でミューチャル・レセプションが実占的に作用してたら、むしろ不思議だよね。

 トロピカル12星座で、天王星を水瓶座、海王星を魚座、冥王星を蠍座として採用しても、実占的な占星術は不可能じゃないけど、その前提として、その中で使える技法と使えない技法の区別をするセンスが必要だと思う。」

桃井 「サイデリアル12星座とトロピカル12星座の重なる領域は、これからもどんどん少なくなっていきますから、西洋占星術も使えなくなっていく技法と使える技法を整理して、新しいスタイルを確立していく必要があるんですね。」

岩田 「日本では、春日氏がサイデリアル12星座とトロピカル12星座の二重構造を提唱し、直居氏がトロピカル・サビアンとサイデリアル・サビアンの二重構造を推定しているから、サイデリアルとトロピカルが共存可能という立場は、東西占星術研究所独自の主張ではないんだ。

 でも、このサイデリアル・サビアンが成立するかどうかは、インド占星術の理論構造を研究する立場にとっては、とても重要な意味を持っている。

 つまり、サイデリアル12星座の各度数に360のサビアン・シンボルを割り当てることが可能なら、サイデリアル12星座の本質が、トロピカル12星座と同様にハウス・システムである可能性も、検討する必要が出てくるからね。」

桃井 「・・・・。
 サイデリアル12星座が、トロピカル12星座と同じようにハウス・システムだとすると、もう12星座という概念自体が占星術から無くなってしまいますね。」

岩田 「その場合は、27ナクシャトラだけが銀河恒星群と対応した天空の分割システムであるということになる。27ナクシャトラは、月の軌道上で目立つ銀河恒星群を目印として、月の軌道、つまり天空を27分割したのが起源だから、ナクシャトラと銀河恒星群との対応は、とても自然で本質的なんだ。

 そしてサイデリアル12星座とは、アシュヴィニーの0度をサイデリアル12ハウスの第1室の起点とするハウス・システムということになるんだね。」

桃井 「これはもう、インド占星術の根底までひっくり返る、大変な話になりましたね。」

岩田 「西洋占星術のサイデリアル占星学派や、インド占星術でサイデリアル12星座絶対主義の立場に立つ人にとっては、そのとおりだろうね。ところが東西占星術研究所のように、『星座=ハウス』のハウス・システムを使っている場合、

『サイデリアル12星座もトロピカル12星座も、その本質は12ハウスである。そして、天空の銀河恒星群に対応している天空分割システムは27ナクシャトラだけである。』

という前提を採用したとしても、占星学の理論体系を構成することが可能だと思っている。」

桃井 「西洋占星術にもサイデリアル12星座を使う占星術があるんですか?」

岩田 「現代西洋占星術にも、シリル・フェイガン氏のサイデリアル占星学というのがあるんだ。フェイガン氏は、古代エジプトの宰相イムホテップが考案したという『アセンダント=ハウスの中央&逆回転8区分ハウス』という、ハウス・システムも紹介している人だ。

 このハウス・システムは、いまのところ東西占星術研究所でも取り扱い不能に近い、超過激なハウス・システムだね。」

桃井 「日本に紹介されていないけど、西洋占星術には、本当にいろいろな流派があるんですね。」

岩田 「西洋占星術もインド占星術も、まだ日本語の壁に守られているから、外国の書籍やメーリング・リストから内容を翻訳して、うまくまとめたもの発表していても、今はやっていける。

 でも、その壁もどんどん薄くなっていくだろうから、西洋・インド関係なく、その時にも占星術研究家として通用するだけの力量を持とうという志をもたなきゃね。」

桃井 「サイデリアル12星座と『星座=ハウス』の理論的な関係について教えてもらえますか?」

岩田 「ちょっと難しい話になるけど、東西占星術研究所で構築しようとしている占星学の理論体系で、サイデリアル12星座が銀河恒星群と直接リンクした天空の分割システムだとすると、『星座=ハウス』というハウス・システムには、『共鳴構造によるエッジング効果』というメカニズムが存在するため、実際のリーディングにおいて大変強く作用するという考え方が出来ると思っているんだ。

 ところが、サイデリアル12星座の本質が12ハウスだとすると、『27ナクシャトラとサイデリアル12ハウスの倍数共鳴構造』というところから、理論展開をスタートすることになる。

 ただこの場合、サイデリアル12星座で星座交換が強力に作用する理由を、どう理論的に処理するかという難問が生じるので、サイデアル12星座は星座であると考えているけどね。」

桃井 「その辺になると、もう少し数理的教養を深めていかないと、ついていけない世界になりますね。」

岩田 「そうだね、このレベルになると談話室の内容を超えてしまうから、今日はここまでにしておこうか。」

桃井 「はい、東西占星術研究所の占星術研究って、本当に何が飛び出すかわからない、知的スリリングを感じさせる世界だと思います。」




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