2005/10/26 (水)

地球はどこに?

桃井 「岩田先生、ホロスコープ上に地球という惑星を表示するとしたら、それは太陽から180度の位置になるって、西洋占星術の本を読んでいたら書いてあったんですけど。

 でも、岩田先生には以前の談話室で、地球という惑星をホロスコープ上に探すなら、ICがそれに対応するって教えていただいたんですが、こういう見方もあるんですか?」

岩田 「太陽の位置から見て、地球の在住する12星座の位置を考えるなら、ホロスコープ上での太陽の黄道12星座からほぼ180度の度数になるは、そのとおりだと思う。

 しかし『地球という惑星を表示するとしたら、それは太陽から180度の位置になる』という考え方には、ホロスコープの理論構造に関しての理解に混乱があるんじゃないかな。

 つまりインド占星術でも西洋占星術でも、ホロスコープというのは、地球上のある1地点から見た天文学的な3次元空間のデータを、1次元空間に投影したものだよね。」

桃井 「ホロスコープは平面に描かれていますから、1次元空間ではなくて2次元空間になりませんか?」

岩田 「ホロスコープは、紙や画面のような2次元空間に描かれているけど、その本質的なデータは黄道12星座における度数だから、一つの数値でその位置を指定出来る。これは明らかに1次元の特徴だ。

 そして黄道12星座は360度進行すると最初の度数に戻るという、閉じた1次元の数空間になっているから、これに幾何学的なイメージを与えれば、円という2次元的な図形では無くって、円周という1次元的な閉じた曲線ということになる。」

桃井 「説明を聞くと、確かにそのとおりですね。」

岩田 「したがってホロスコープについて考える場合は、宇宙空間の天体位置という3次元空間的なデータを、地球上のある1地点から見た黄道12星座という、1次元空間の位置データとして非可逆的に圧縮した特殊なグラフだという認識を失わないことが必要だ。

 この認識があれば、通常のホロスコープの中に『地球という惑星を表示するとしたら、それは太陽から180度の位置になる』という考え方で、太陽の位置から180度の点に『+』や『○の中に+』という地球の記号を書き込むのは、ホロスコープに内在する座標の概念を無視していることは分かるよね。

 ましてこの地球記号に対して、他の天体からのアスペクトなんかを取ったりしたら、完全に間違いだらけの占星術という世界に入ってしまうことになる。」

桃井 「それは確かに、そのとおりでしょうね。そうすると、ホロスコープにおける地球の位置というのは、やっぱりICになるんでしょうか?」

岩田 「ところが、『地球という惑星を表示するとしたら、それは太陽から180度の位置になる』という考え方で、ホロスコープにおける地球の位置を考えることは、まったく無意味なことではないんだ。

 『地球という惑星を表示するとしたら、それは太陽から180度の位置になる』という考え方がおかしいのは、通常のホロスコープに太陽から見た地球の位置を書き込もうとするからで、太陽を座標の原点としたホロスコープというものを用意すれば、それはそれで興味深いホロスコープ・リーディングが可能になる。」

桃井 「そういうホロスコープの考え方もあるんですね。」

岩田 「これは、通常のホロスコープが地球中心という意味を持つジオセントリック・チャートと呼ばれるのに対して、太陽中心という意味のヘリオセントリック・チャートと呼ばれるホロスコープが存在する。

 これは高機能な西洋占星術のソフトではサポートされている場合が多いけど、ヘリオセントリック・チャートのホロスコープ・リーディングに関しては、ほとんど未開発といっていいくらいのノウハウしかないんじゃないかな。」

桃井 「占星術には、いろいろなホロスコープが存在するんですね。」

岩田 「深遠な叡智であった占星術も、これから学問的な発展をして、21世紀には『術』と『学』という両面を兼ね備えた学術分野として展開していくためには、既存の技法が理論的に深まり、多くの新しい技法が開発される必要があると思う。

 ヘリオセントリック・チャートも、そういう意味でこれから研究されていくホロスコープになるだろうね。

 それからICをホロスコープにおける地球の位置とする考え方についても、地球上のある1地点からみた地球の中心位置が、黄道12星座のどの度数に位置するかをもって、ホロスコープにおける地球の位置表示と考えるなら、その度数には誤差が生じている。

 だからICの位置というのは、ホロスコープにおけるおおよその地球の位置の目安となると考えるのが、より正確な理解になる。」

桃井 「そうする将来的には、ICの近くに地球の記号を表示するホロスコープが一般的になる可能性もありますね。」

岩田 「地球を使ったホロスコープ・リーディングのノウハウが開発され、それが魅力的な技法であるならば、そうなっていくだろうね。」




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