2006/03/15 (水)

月談義

桃井 「岩田先生、前回の『研究ノートの余白からbS』に書かれていた、


 ここでは、『(もし昼生まれなら、)欠けていく月の生まれによって、月の悪い惑星配置が完全にキャンセルされる。』と述べられています。


というのを岩田先生に教えてもらった時は、それまで『満ちていく月は安全装置』というふうに憶えていたので、私もショックだったのを思い出しました。」

岩田 「その『満ちていく月は安全装置』というのは、K.N.ラオ氏の『Learn Hindu Astrology Easily』の日本語訳から来ている表現だったよね。

 でも日本語訳されたその本にも、『出生は、シュクラパクシャで、夜です。ですから安全装置・・・が存在しています。』と書かれているはず。

 だから、夜生まれで満ちていく月は安全装置と書かれているけど、昼生まれで満ちていく月が安全装置とは書かれていないよね。」

桃井 「うーん、たしかにそうなんですけど・・・。

 でも昼生まれの場合は、逆に欠けていく月が安全装置になるなんて、普通は思いつかないと思います。」

岩田 「まあ、そうだろうね。

 西洋占星術では、満ちていく月は good で、欠けていく月は bad というのが基本だし、一般的なイメージでも満ちていく月は、よさそうなイメージがある。

 だからこの部分に関して翻訳する時に、訳者註による解説を付けておくとよかったんだろうね。その他の部分に関しては、なかなか充実した訳者註になっているんだから。」

桃井 「それから、前回の『研究ノートの余白からbS』の最後に書かれていた、


(もちろんインド占星術において、満ちていく月は吉、欠けていく月は凶という吉凶判断をする場合は大変多いのですが、出生のホロスコープでの生来的吉凶判断に使用する場合、より優先する判断基準が、月の光の強さを含めて幾つかあるということです。)


って、具体的にどんな判断基準ですか?」

岩田 「そうだね、満ちていく月と欠けていく月という月の相(フェーズ)以外にも、吉凶判断に重要な月の相が二つ、吉凶の性質に重要な月の特別な相が一つある。

 それにまた、月の吉凶に影響を与える星座の度数というのが、1ドレッカナの10度幅や、1ナヴァムシャで1パダの3度20分幅で存在するし、1度幅の度数を使う技法も複数存在する。

 でもこれらの技法は、インド占星術の中級から上級者が学んだり、インド占星術のプロとして指導する立場では考慮する必要のある技法、というレベルになるんだ。だから入門の最初の段階では、とにかく『月は生来的弱い吉星』として扱う。

 そして入門の終わりから初級の初めのレベルでは、『満月に近ければ月は生来的吉星』、『新月に近くて強い凶星のアスペクトがあれば月は生来的凶星』と考えておけば、まあ十分だと思うよ。」

桃井 「えー、それでもいいんですか?」

岩田 「だって、月だけ特別に精密な生来的吉凶判断をやっても、その他の占星術技法がその判断レベルに追いつかなければ、あんまり意味の無い一点豪華主義になってしまうと思うけど。」

桃井 「うーん、たしかに岩田先生から個人指導を受ける時のレベルでも、月の支配するハウスや在住するハウスによる機能的吉凶、月の形成するヨーガによる吉凶などを、基本的な月の生来的吉凶と適切に総合するセンスを要求されるのがほとんどですね。」

岩田 「そして、初級の終わりのレベルになれば、月の満ち欠けも考慮することによって、月の吉凶がどういう性質なのかを考えるし、機能的吉凶やヨーガによる吉凶も使っていくとになるだろうね。

 だから通信講座の初級テキストも、そのように内容が構成されている。」

桃井 「月の満ち欠けは、吉凶判断だけでなく、月の性質という面でも影響があるんですね。」

岩田 「まあ月の性質という意味でなく、月の満ち欠けが生来的吉凶に明瞭に影響すると、実占の場面で感じるのは、月が太陽と1度以内とか3度以内の極端に暗い月の場合だね。

 生来的凶星による傷つきが無いという条件において、この場合は満ちていく月の方が、欠けていく月の場合より、明らかに吉的な救いがあるという感じがする。」

桃井 「月の吉凶の微妙なニュアンスをとらえるセンスは、なかなか高度な上級者以上のレベルだと思います。」

岩田 「だから、桃井君に対する個人指導でも、そのセンスが向上するようなポイントを、折に触れて教えることになるんだ。」

桃井 「はい。」




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