2019/12/08 (日)

ダシャーの技法その1 (金星&ラーフ、第10室からのハウス展開)

桃井 「岩田先生、少し質問があるんですけどいいですか?」

岩田 「いいけど、それは?」

桃井 「東西占星術通信Vol.16では、ハリウッドの一流スター達の検証をした結果、金星&ラーフのダシャーは世間的評価や人気が大きく上昇するデビューの時期になるという事例が圧倒的に多いということを教えてもらいました。

私がインド占星術の検証をしていても、アロマの教室を開いている女性がラーフ&金星の時期に入って急に生徒が増えたりとか、女性が社会的に成功するにはラーフ&金星のダシャーってとても力があるなあって思うんです。

でも、岩田先生が唯一ときどき見に行っているインド占星術サイトのうちゃさんのブログに、ラーフ・金星期にビヨン・ボルグがさんざんな目にあったという記事が書かれていて、その記事のコメントにも『金星・ラーフ期が運気が大きく低下してさんざんな時期だった』みたいな投稿があって。

それで、なんか東西のラーフ&金星期は社会的人気が大ブレイクすることの多い時期という定番リーディングとは真逆だなあって思ったんです。」

岩田 「その質問に対する回答として、2つの視点から話すことが出来る。

つまり、1つはインド占星術の技法解説的な視点、もう1つは精神性&霊性における因果論的な解説。まあ、ここでは技法的な解説をしてみよう。桃井君の質問にはインド占星術の基本技法に関する重要な観点が関わっているからね。」

桃井 「よろしくお願いします。」

岩田 「まずは話の導入として、ホリエモンのホロスコープを取り上げてみようか。

通称ホリエモンと呼ばれている堀江貴文氏は2006年1月23日に証券取引法違反容疑により逮捕され、2007年3月16日に懲役2年6ヶ月の実刑判決が言い渡されている。

ホリエモンは2004年3月21日から2007年3月22日まで、ヴィムショタリ・ダシャーで金星・ラーフ期が来ているから、ラーフ&金星のダシャーでさんざんな目にあっている事例の典型と言える。

 でも、彼の金星は乙女座4度50分の減衰金星。K・S・チャラク氏の言っているように減衰惑星のダシャーは社会的屈辱を受けやすい時期だから、ホリエモンの金星期20年間は基本的に社会的屈辱を受けやすい時期にはなっている。

だけど、マハーダシャーの象意はマハーダシャーの期間中ずっと現象化するわけではなく、アンタラーダシャーやプラティアンタラーダシャーに来ている惑星の象意と連動して現象化することになる。

よって、ホリエモンが実刑判決を受けた金星・ラーフ期は、アンタラーダシャーの惑星であるラーフと共鳴しやすいマハーダシャーの金星の象意とは何かに注目することになるね。」

桃井 「惑星のハウス支配と在住ハウスについて考えると、ラーフはアセンダントから数えて第7室に射手座に在住して、その支配星である木星も第7室射手座に在住していますから、金星の支配する第5&第12室と第7室で共鳴する象意が何かを検討することになりますね。

 恋愛&結婚以外で第7室の基本的な象意というと『引退とデビューのハウス』ですし、第12室の基本的象意は失うハウスですから、それまでの色々な立場を失って社会的生活のほとんどすべてから引退する刑務所生活へのデビューと考えれば、第7室と第12室の象意が共鳴したのねというのは、東西的なリーディング・スタイルに慣れていればすぐにわかりますよね。

 ただ、強い吉ハウスであるムーラトリコーナー・ハウスの第5室が絡んでいるのが、ちょっと不思議といえば不思議なんですけど・・・。」

岩田 「桃井君は、ヴィムショタリダシャーの吉凶はその惑星が支配するハウスの組み合わせが基本になるということが身に付いているから、強い吉ハウスに分類される第5室と中立ハウスに分類される第12室を支配する双子座ラグナの金星は生来的にも機能的にも強い吉星の状態になっているということを、最初に検討してしまうから逆に不思議だと思ってしまうんだろうね。

 でも第5室は、社会的地位を表す第10室を起点として数えていくと、第10室から数えて第8番に位置するハウスなので、『ハウス展開の技法』という視点から解釈すれば、第5室に社会的地位に関する不幸という象意が成立してしまう。

 そして、この『第5室は社会的地位に関する不幸のハウス』というのは、実際のインド占星術における鑑定場面でも十分に有効な技法として成立しているから、ホリエモンが実刑判決を受けた時期に第5室を支配する惑星のダシャーが絡んでくるのは、不思議というよりも、納得という方が適切なんだ。」

桃井 「ハウス展開の技法って、実際の鑑定の場面では本人の家族について検討する時によく使いますけど、第10室の社会的地位みたいな象意にも使える応用範囲が広い技法なんですね。」

岩田 「そりゃあ、『あるハウスから数えて第12番目のハウスは、そのハウスのテーマを失うハウス』というハウス展開は、ほとんどすべてのハウス象意に応用するのは、桃井君だって使っているんだから、驚く必要は無いと思うんだけどね。」

桃井 「そういわれると、たしかに、そうですねぇ。」

岩田 「とりあえず、ここで一息入れて、続きは次回にしよう。」

桃井 「はい、ではまたよろしくお願いします。」




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