![]() 簡易レファレンス![]() サイデリアル星座帯●トロピカル星座帯とサイデリアル星座帯とのズレ西洋占星術で使用されている星座帯の位置は、毎年の春分点を牡羊座の起点(0度)としています。つまり、春分になった瞬間に太陽の位置する地点が牡羊座の0度となります。例えば、毎年3月21日の春分点から約1ヶ月間は牡羊座生まれ、次の1ヶ月間は牡牛座生まれ、その次の1ヶ月間は双子座生まれ・・・、という具合になります。 このトロピカル星座帯もかつては恒星を基準とする実際の星座の位置とほぼ対応していました(ここで、「ほぼ」と言っているのは厳密には天空上の実際の星座は等しく30度ずつには分割されていないためです)。しかし、地球の歳差運動のために、毎年少しずつ(およそ72年に1度ずつの割合で)星座の位置が逆行し、現在では実際のそれよりもおよそ24度近くズレているとされています。つまり、現在の春分点(=トロピカル星座帯での牡羊座0度)は、実際の恒星を基準とする牡羊座0度ではなく、実際には魚座6度付近にあることになります。 この移動する星座帯をトロピカル星座帯(移動星座帯)と呼び、恒星を基準として、移動しない星座帯をサイデリアル星座帯(固定星座帯)と呼んで区別しています。西洋占星術では、トロピカル星座帯を使用しますが、インド占星術ではサイデリアル星座帯を使用しています。この点が、インド占星術で使用する星座帯と西洋占星術で使用する星座帯の大きな相違点になります。そしてトロピカル星座帯とサイデリアル星座帯の差異、すなわちおよそ24度を現在におけるアヤナームシャ(Ayanamsa)と呼んでいます。 よって、ある時点におけるトロピカル星座帯とサイデリアル星座帯の関係は、その時点におけるアヤナームシャを介して以下の式で表わされます。 [トロピカル星座帯での度数]−[アヤナームシャ]=[サイデリアル星座帯での度数] トロピカル星座帯からサイデリアル星座帯への変換あるいはその逆の変換は、いたって容易であることがわかります。 ![]() 重要なアヤナームシャの選択しかし、問題はアヤナームシャの精度にあります。かつて、トロピカル星座帯とサイデリアル星座帯は一致していたと言いましたが、それは紀元200年から600年頃と考えられ、実に400年もの幅があります。その理由は、春分点が牡羊座0度にあった時期がいつであったかに関して専門家の間で意見が分かれているためです。71.61〜71.67年に1度ずつトロピカル星座帯とサイデリアル星座帯の間にズレが生じるので(これもどの時期を指すかにより、あるいは専門家により若干異なりますが、違いの影響は無視できる程度に小さい)、例えば71.67年に1度ずつズレが生じているとして1970年におけるズレを計算すると、これまでの1370〜1770年間に19.1〜24.7度のズレが生じたことになります。つまり、1970年におけるアヤナームシャは平均して21.9度となりますが、最大値と最小値の間に実に5度近くの幅が生じることになります。 これまでに様々な占星家によってアヤナームシャが提案されていますが、インド占星家でもっともポピュラーなのはインド政府の暦改革委員長(Secretary of Calendar Reform Committee)のラヒリ(Lahiri)が考案したアヤナームシャです。その他、クリシュナムルティ(Krishnamurti)、ラーマン(B.V.Raman)、ファーガン=ブラッドリー(Fagan/Bradley)、リチャード・フック(Richard Hook)などによるアヤナームシャなど数十種類が存在しています。西洋占星家の間では、ファーガン=ブラッドリーのアヤナームシャが多用されているようですが、惑星サイクル(ダシャー・システム)を使用して予測をする場合はほとんど役に立たちません。彼らのアヤナームシャを使ってインド占星術の勉強をした場合、「インド占星術は全く当たらない」と感じてしまうかもしれません。ラーマンのアヤナームシャについても同様のことがいえます。実はこのアヤナームシャの選択こそがインド占星術の学習における大きな分かれ道といって差し支えないと思います。アヤナームシャが間違っていると、惑星期間(ダシャー)も正確でなくなりますし、分割図も使用できなくなります。その結果、「インド占星術は使えない」という結論に達してしまうのです。 東西占星術研究所では経験的に、ラヒリのアヤナームシャは精度が高いと認識しています。クリシュナムルティ教授のアヤナームシャ、「死の占星術(Astrology of Death)」の著者として有名なリチャード・フックのアヤナームシャも、ラヒリに非常に近いので、彼らのアヤナームシャで代替しても大きな違いは無いでしょう。
![]() |
|