![]() 簡易レファレンス![]() 西洋占星術におけるトランジット解釈●トランジット土星の解釈トランジットの土星が、出生図の10室を通過するとき、皆さんはどのように解釈するでしょうか?
こんなところでしょうか? ●吉凶の判断今までの研究から、実際のケースでは、a)・b)あるいはc)のどちらもが現象化し得ます。しかし、現在の西洋占星術では、実際にそのどちらが起こるかは、「神のみぞ知る」というスタンスでしょう。また、その吉凶が判定できないことから、「成功するか失敗するかは、あなたの努力次第である」という自由意思論が大勢を占めています。確かにこのような肯定的な考え方は、一般の多くの人には受け入れやすいかもしれません。そして、このような自由意思論は、その起こりうる現象の吉凶を理解することが出来ない占星家の言い訳にも使われがちです。しかし、そのような占星家でも、内心は、吉凶のどちらが現象化するか理解できたほうが良いと思っているはずです。何が現象化するのかをできるだけ明確に理解した上で、それに対する最善のアドヴァイスをすることが理想であると考えます。問題がハッキリすればするほど、出来る範囲での解決策を立てたり、クライアントに対しても心構えをもたせることが可能となるからです。 ![]() アシュタカヴァルガ(8分割)のしくみ●8つのラグナ インド占星術においても、西洋占星術と同様、アセンダントを基点とするハウスを最も重要視しています。しかし、それだけではなく今回説明するアシュタカヴァルガでは、太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星の各7惑星が在住する星座をも基点として考慮します。つまり、このシステムでは、アセンダントがある星座を1室とする西洋占星術で通常使用されるホロスコープ以外に、各7つの惑星が在住する星座もラグナ(ホロスコープの基点)として検討することになります。したがって、アシュタカヴァルガで使用するラグナは全部で8つということになります。ちなみにアシュタカヴァルガの“アシュタカ”はサンスクリット語で8を意味し、“ヴァルガ”は分割を意味しています。 ※インド占星術には、この他に、特定の目的に応じて、いろんなラグナを使用することがありますが、ここでは、アシュタカヴァルガの説明が目的なので、今回は触れないことにします。 ●現代人のための占星術体系インド占星術でもっとも重要視されている古典ブリハット・パラシャラ・ホーラー・シャーストラ(略してBPHS)の66章に、聖者パラシャラが弟子のマイトレーヤにアシュタカヴァルガを伝授した経緯が記載されています。以下の文章は、聖者パラシャラに対して、弟子のマイトレーヤが懇願している部分です。 おー、主よ! あなたは多くの聖者方や学識ある訓戒者方の説に言及しながら、惑星とハウスの効果について詳細に説明してくださいました。しかし、各トランジット惑星の複合的な効果ということを考えた場合、それらが起こりうる結果の中で唯一のものであると断定することは出来ません。 カーリー・ユーガ(正法がすたれた時代。ヴェーダによると現代はカーリー・ユーガに相当する)においては、人々は罪深い行いに耽ることによって愚鈍になってしまいます。それゆえ、どうかご慈悲をお持ちになり、理解が遅くなる(カーリー・ユーガの)人々のために、ただ単にトランジットの惑星配置を描写するだけで、自分自身の幸福や不幸、寿命についての明確な知識を得ることが出来るような学術体系を詳しく説明してください。 このアシュタカヴァルガを計算するのは非常に複雑で面倒です。しかし、その実践での適用については、上記のエピソードからもわかる通り至って簡単です。また、アシュタカヴァルガを使った検証例については、「検証占星術PART1」でも取り上げていますので、それを読めばある程度はその使用法について理解できるでしょう。 ●アシュタカヴァルガの原理“ビンドゥー”は”点”という意味のサンスクリット語ですが、ここでは”吉ポイント”、”功徳の現象化するポイント”、または”幸運のポイント”と考えればよいでしょう。 アシュタカヴァルガでは8つのラグナを考慮に入れ、各ハウス(星座)の吉凶をビンドゥーと呼ばれる数値で表現するというのは前述の通りです。 そして、アシュタカヴァルガでは、それぞれ7つの惑星ごと(太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星)に、その惑星にとって、それぞれのラグナ(アセンダント、太陽在住星座、月在住星座…土星在住星座)から数えて何番目のハウスが吉ハウスで何番目のハウスが凶ハウスかが決まっています。これは古典によって、計算の仕方に若干の違いがありますが、今のところヴァラーハミヒラの著した古典ブリハット・ジャータカに記載されている説を採用しています。 ●惑星アシュタカヴァルガ(惑星固有のアシュタカヴァルガ)例えば、太陽の惑星アシュタカヴァルガの場合、太陽在住星座から数えて(太陽在住星座を1番目と数える)1、2、4、7、8、9、10、11番目の星座が太陽にとっての吉星座であると古典に記されています。そして、これらの吉星座はそれぞれビンドゥーを獲得します。月在住星座から数えて3、6、10、11番目の星座も太陽にとっての吉星座です。したがって、これらの星座もビンドゥーを獲得します。さらに、火星在住星座から数えて1、2、4、7、8、9、10、11番目の星座も太陽にとっての吉星座です。したがって、これらの星座もビンドゥーを獲得します。水星在住星座から数えて…。このようにして、太陽にとっての吉星座を、8つのラグナを基点として計算し、最終的にそれぞれの星座が獲得したビンドゥーの数をそれぞれの星座ごとに合計して算出した値が、それぞれの星座における太陽の惑星アシュタカヴァルガのビンドゥーになります。 参考までに、下に、太陽の惑星アシュタカヴァルガを計算するときに基準となるテーブルを掲げておきます。
この太陽のアシュタカヴァルガによって、例えば、トランジットの太陽がどの星座を通過するときに良い現象が起き、どの星座を通過するときに悪い現象が起きるか、また、どの星座を通過するときに平凡な結果を得るかを知ることができるます。ビンドゥーの最低値は0で、最高値は8です。そして、4が平均点となります。例えば、太陽のトランジットに関しては、ビンドゥーがその星座に4つあるところを通過していれば平均的な運勢で、それ以下だと、凶、それ以上は吉、という具合です。
このようにして、太陽以外の他の6つの惑星についても、アシュタカヴァルガを計算することによって、どの星座がそれぞれの惑星にとっての吉星座なのか、あるいは凶星座なのか、そしてその程度はどのくらいかを知ることができます。 ●総合アシュタカヴァルガ さらに、こうして求めた惑星ごとのアシュタカヴァルガのビンドゥーを各星座ごとに合計したものを総合(サルヴァ)アシュタカヴァルガといいます。総合アシュタカヴァルガは、惑星アシュタカヴァルガと同様に、その吉凶を見る際の判断材料とすることができます。
蟹座における太陽のアシュタカヴァルガは7、月のアシュタカヴァルガは4、火星のアシュタカヴァルガは4、水星のアシュタカヴァルガは5、木星のアシュタカヴァルガは2、金星のアシュタカヴァルガは4、土星のアシュタカヴァルガは5です。この場合、蟹座の総合アシュタカヴァルガは、蟹座における各惑星の惑星アシュタカヴァルガのビンドゥ値を合計した値、7+4+4+5+2+4+5=31、となります。 したがって、太陽が蟹座を通過(トランジット)するときのビンドゥは7/31(惑星アシュタカヴァルガ/総合アシュタカヴァルガ)と表現できます。総合アシュタカヴァルガの平均値は28、太陽の惑星アシュタカヴァルガの平均値は4です。蟹座における太陽の惑星アシュタカヴァルガのビンドゥ値7は、平均値4を100%として比較すると175%となり、かなり平均を上回っています。また、蟹座における総合アシュタカヴァルガのビンドゥ値(総合の値はどの惑星にとっても同じ値です)は31ですが、これは平均値28を100%として計算すると、110%となり、これは平均を少し上回っていることになります。 この場合、トランジットの太陽が蟹座を通過する時期は、太陽が象徴する事柄、父親、プライド、名誉、自我、心臓などについて、「非常に良い」ということになります。また、太陽が支配するハウスについても同様に、非常に良いことが期待できます。さらに、そのホロスコープにおいて、蟹座がアセンダントから数えて何室に相当するかによって、どのテーマに関することが良いのかが違ってきます。10室なら、職業や地位、名誉、4室なら家、土地、乗物、母親など、7室なら、対人、異性といった具合です。このカーターのホロスコープでは、蟹座は10室なので、職業や地位、名誉と関係があるということになります。 ![]() アシュタカヴァルガを使ったトランジット土星の解釈インド占星術におけるハウス・システムは非常に明確に作用しています。したがって、トランジットの土星が、アシュタカヴァルガのビンドゥが1/17しかない10室を通過すれば、職業・地位・名誉(10室)における困難・遅延(土星)や、上司(10室)との間のトラブル・抑圧(土星)などがかなりの確率で予測できます。 また、例えば、トランジットの土星が5/31ものビンドゥがある10室を通過すれば、職業上(10室)での達成(土星)を予測できます。実は、カーターのケースがこれに当てはまります。彼が、大統領に就任したとき土星は5/31の10室・蟹座を通過していました。土星の惑星アシュタカヴァルガの平均は3.25なので、5は平均よりかなり上回っています。ちなみに、彼の任期が終了したとき、トランジットの土星は12室・乙女座(2/21)を通過していました。ちなみに12室は隠居のハウスでもあります。
アシュタカヴァルガで判断するときは、ヴィムショタリ・ダシャーやチャラ・ダシャーなど、より優先される技法が上記の内容を否定しないことを前提条件としなければなりません。アシュタカヴァルガだけで、すべての現象を理解できるほど単純ではないことは確かです。しかし、どちらにしても、トランジットを見る際、アシュタカヴァルガを利用すれば、今現象化しようとしていることについての吉凶や、その続く期間について、さらに微細に判別できることは間違いありません。 ![]() |
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