受講生の卒業レポート
「太宰治」
田中明恵研究員
1.プロフィール
太宰 治
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太宰治は、青森の県下有数の大地主の家に生を受けた。
父は、婿養子。政治家として活躍し、地元の名士として名を馳せた。母親が病弱であったため、乳母の手で育てられたが、その乳母が再婚で家を去ると、叔母が母親代わりとなった。
太宰は、貧しい小作農の労働のうえに成り立つ、生家の富に恥を感じていた。しかし、薬や酒、そして女性に逃避する生活の中、その生家の富にも頼らざるを得ない日々を送る。
破滅的な生活であったが、小説を書くことには真剣に取り組み、数多くの作品を生み出した。その作風は一般に退廃的と言われているが、明るさやユーモアに富むものもあり多様である。また、神に対する関心も高かったとされ、独自の世界を築いている。
代表作に「人間失格」「斜陽」「走れメロス」など多数。
生涯、4度にわたる自殺や心中未遂のうち、共に心中した女性が一人、亡くなっている。最後は愛人、山崎富江(とみえ)とともに玉川上水にて入水自殺を遂げた。
2.出生時刻について
太宰治について、はっきりした出生時刻は分からない。ただ、太宰治の「六月十九日」という随筆には、 「私がこの家で生れた日の事を、ちゃんと皆が知っていたのである。夕暮でした。」とある。
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この時刻に一番あてはまるアセンダントは16:19から18:45までを占めるさそり座である。さそり座は太宰治の性格によく合致している星座である。女性星座でエレメントは水、火星の支配する星座でもあるため、感情的で激しい部分もありながら内に秘める傾向がある。さそり座では、ケートゥが高揚しており、太宰の強い個性と孤独な傾向もよく表している。さらに、さそり座アセンダントに確証を強めるため、ヴィムショタリー・ダシャーを使って検証してみる。
●入水自殺
太宰が愛人の山崎富栄(とみえ)とともに玉川上水に入水したのは1948年6月13日深夜。死亡時刻は13日深夜から14日にかけてだろうと思われる。
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さそり座をアセンダントとすると、1948年はヴィムショタリー・ダシャーにおいて、マハーダシャー水星期になる。水星はドゥシュタナ・ハウスの第8室と、凶ハウスの第11室を支配して、マラカ・ハウス7室に在住している。マハーダシャー水星を第1室として数えてみても、マラカ・ハウス第7室支配の火星が、マハーダシャーの水星にアスペクトしている。
さらにアンタラダシャーを検討してみると、6月13日〜14日は、出生時刻が16:19から17:39までアンタラダシャーは金星になる。金星はマラカ・ハウスの7室とドゥシュタナ・ハウスの第12室を支配し、第8室ふたご座に在住して、マラカ・ハウス2室にアスペクトをしている。
次に、17:40〜18:45までのアンタラダシャー太陽について検証してみる。 太陽も金星と同じ第8室ふたご座に在住し、マラカ・ハウスの第2室にアスペクトをしていることは同じだが、第10室支配であり、死に結びつかない。 また、マハーダシャー水星から見ると、太陽は第4室支配のみであるが、金星は第1室を支配すると同時にドゥシュタナ・ハウス第6室も支配している。
以上のことからアンタラダシャー金星はほぼ間違ないと思われるが、アンタラダシャー金星となる16:19から17:39のちょうど中間の時刻17:00を元に、再度、確認のため、父親が亡くなった1923年3月を見てみる。
●父親の死亡時期
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マハーダシャーは木星、アンタラダシャーはラーフである。
父親を表す第9室はかに座であり、そこから数えて第2室しし座は父親にとってのマラカ・ハウスになる。そこには、マハーダシャーの木星が在住しており、第8室みずがめ座に在住する火星からアスペクトを受けている。
アンタラダシャーのラーフはマラカ・ハウス第7室やぎ座にアスペクト。第7室を支配する土星も、アンタラダシャーのラーフにアスペクトしている。
これにより、太宰治のアセンダントはさそり座、大まかな出生時刻は17:00ごろであると判断した。
3.ホロスコープから見る人間性
太宰治 出生図(度数付) |
●パートナー
配偶者を表す第7室おうし座には、ラーフが在住し、土星の3番目のアスペクトと、火星の4番目のアスペクトを受け傷ついている。また、水星は、苦悩の第8室ふたご座を支配して、配偶者を表す第7室に在住。さらに、第7室を支配し第8室に在住する金星と星座交換をしている。
多くの女性遍歴、離婚も経験し、2度の心中未遂の後、最後は自らも死に至ったという太宰の人生を物語っているようである。
●苦悩
ウパチャヤ・ハウスには凶星がひとつも在住しないため、逆境に弱く、簡単に死を選ぶという傾向を強めている。さらに第8室ふたご座には太陽、月、金星と3惑星集中、さらに冥王星、海王星も在住しており、苦悩の深みにはまり抜け出せない様子がうかがえる。
太陽は父親の表示体であるが、さらに父親、社会を示す第10室を支配することにより、父親的な要素を強く表している。第8室に在住する太陽はそんな父的なものを生涯、嫌い続けた太宰をよく表わしている。
また、同じく第8室に在住する月は、病弱であった母親や、養育者とも離れなければならず、心の安定をもたらす母親の愛情という面で複雑さを抱えていたことが表れている。 また、第8室に在住する月は、それだけでも物事に深刻になりやすい傾向をもたらす。
太宰は自分の生まれた家を嫌いながらも、その生家からの資金援助を受け続ける生活を送る。
母方の家を表す第4室みずがめ座在住の火星は自身を示す第1室とトラブルや損失のハウス第6室を支配している。 さらに第11室は先祖代々の資産を意味するが、ここに火星、土星がアスペクトしている。このハウスの支配星は水星であり、逆行のうえ、ラーフ、土星、火星にアスペクトを受け傷ついている。これでは、実家の財産を浪費せざるを得ないだろうと思われるような状態である。 第11室のおとめ座は、月、太陽ラグナから第4室であり、私的生活において、さまざまな困難を抱えていたことが現れている。
●文学者
太宰の文学者としての成功は、仕事を表す第10室しし座に在住する木星が物語っているように思う。 木星は文学の星であるが、言葉の第2室と創造・芸術の第5室を支配し、その意味合いを強めているうえ、ヴァルゴッタマの度数に在住し強い。そして、第1室を支配し第4室みずがめ座に在住する火星と、ラージャ・ヨーガを形成している。 ラージャ・ヨーガは成功を表すヨーガである。 さらに、相互アスペクトする火星と木星は、同時に叡智、実行力を表す、グル・マンガラ・ヨーガ的な惑星配置を形成しており、作品を作ることに関しては、真面目に精力的に取り組んだ太宰を表している。 火星は自身を示す第1室と病気、借金などトラブルを表す第6室を支配し、母親や母方の家柄、そして本人のプライベートな部分を表す第4室に在住している。 第10室木星と相互アスペクトをする火星は、太宰文学がそれらのものと密接に関わったうえに成り立っていた事をよく表しているように思う。
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