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開 運 術

開運術第三課 ヤギャとは何か

 開運術の第三課を出すのにずいぶん時間がかかりました。それは、ようやくヤギャが日本人にも一般化する時期が来たのでしょう。もともと法則(ダルマ)と出会うには、その人にそれだけの縁と徳が必要です。また出会うべき天の時というものもあります。

 法則(ダルマ)の一部を形成してきた正統なるインド占星術は、ヴェーダーンガ・ジョーティシャ(ヴェーダの補助学としての発光体の科学)から発展したものです。このジョーティシャと出会い、さらに正しいヤギャと出会うには、それなりの縁と徳が必要です。この理論から言えば、このページを読んでいるあなたはそれだけの素晴らしい縁と徳があるといえます。

●ヤギャ?

 日本で出ているインド占星術の書籍やホームページに、インド占星術は他の占星術と違い、ヤギャという開運術があるから素晴らしいんだという記述がときどきあります。しかしヤギャとは何かということについての具体的な記述がありません。

 そのためインド占星術のファンには、ヤギャが特殊な秘儀であるような印象を持っている人も多いのではないでしょうか。しかしヤギャは、敬虔なヒンドゥー教徒なら毎日行っている行為なのです。そしてヤギャは、運命学の根本的原理である「カルマの法則」の、最も基本的で重要な応用法でもあります。

●ヤギャはインド宗教の基本的実践科目

 ヒンドゥー教は仏教やジャイナ教と同様に、「カルマの法則と輪廻転生により人間とその世界は形成されている」という人間観・宇宙観を根本として成立しています。そしてこれらの宗教における究極の目的は解脱(モクシャ)です。解脱(モクシャ)とはカルマの法則に支配された世界からの解放です。

 しかし、その途中の段階で人間の世界で幸福になり、さらには神々の世界に転生して人間以上の至福を経験することを目的として、善行や徳行をおこない戒律を守るという宗教的実践もあります。そして、これらの目的を達成するための、最も基本的な実践としてヤギャが存在しています。

●三つのヤギャ

 パラマハンサ・ヨガナンダの名著、「あるヨギの自叙伝」にも述べられているように、敬虔なヒンドゥー教徒は毎日一定のヤギャを行う習わしになっています。そしてヤギャは大きく分けて、ブータ・ヤギャ、ピトリ・ヤギャ、ナリ・ヤギャの三つにヤギャに分類されます。

 その一つであるブータ・ヤギャは、すべての動物達に対する食物の供養です。この供養は、人間より魂の進化の段階が遅れているため、理性に恵まれず本能のとりこになっている動物達に対する人間の義務の自覚を象徴しています。祝福された人生を歩む人は、人間より高い世界の魂の恩恵を受けているために幸運なのであり、高い世界の恩恵を受けているのは、自分も過去(または前生)において低い世界の魂に恩恵を与えたからであるというのが、カルマの法則の理論です。よって自分も自分より弱く未熟なものたちに救いの手を差し伸べる実践としてブータ・ヤギャが存在します。

 ピトリ・ヤギャは、自分を生み育ててくれた両親、その両親を生み育てた祖父母、というよに連綿と続く先祖の系列に対する供養です。この供養は、自分が達成した業績や成果、自分が享受している快適さや喜びなどが、自分一人の力で達成したのではなく、多くの先祖や先達の遺産の上に成り立っているのだという、自覚と感謝を象徴しています。

 ナリ・ヤギャは、見知らぬ人達や貧しい人達に食物や必需品の供養です。この供養は、同じ時代に、同じ地球に、同じ人間として生まれた同朋に対する義務と親愛を象徴しています。

●ヤギャを処方するには

 この三つのヤギャの内容を見ればわかるように、ヤギャとはインド占星術による開運術の技法というよりは、人が来世も人間以上の生命体に転生し、その世界で幸福な生活を送るために必要な功徳を積むという、誰もが実践する必要のある善と徳の行為です。

 そして重要なことは、魂が輪廻転生の中で心を成熟させ、霊性を進化させていくための基本的実践の一つとしてヤギャがあるということです。したがって正しいヤギャの処方を決定することは、一般的な占星術家に出来るものではなく、スピリチュアル・アストロロジーを含むインド占星術の技法・カルマの法則の運用法・供養の作法という三つの知識を持っている必要があります。

●スピリチュアル・アストロロジー

 インド占星術には、スピリチュアル・アストロロジーという分野があります。スピリチュアル・アストロロジーでは、精神性や霊性といった観点からチャートを分析していきます。ヤギャの実践がインド宗教の根本原理であるカルマの法則に依存している以上、一般的インド占星術の現世的チャート解釈による運命鑑定だけではヤギャの処方は出来ません。

 このスピリチュアル・アストロロジーの世界は、口頭伝授による秘儀という側面があるため、プロとして活動している日本のインド占星術家でもその存在を理解していない人が多いと思われます。  しかしK.N.Rao氏の「 Learn VEDIC ASTROLOGY Without Tears 」が、「ラオ先生のやさしいインド占星術−入門篇−(K.ナラヤン.ラオ)」という題名で翻訳され、日本でもその片鱗を垣間見ることが出来るようになりました。

●カルマの法則の運用法

 カルマの法則の根本原理は、「良い事をすれば良い結果が自分に返ってくるし、悪い事をすれば悪い結果が自分に返ってくる」という単純なものです。しかし投機で儲けるための根本原理も、「安い時に買って、高いときに売る」という単純なものです。しかしこの原理を実際の資金運用で使いこなす事は至難の業です。

 ましてカルマの法則を個々の具体的局面で的確に運用するには、投機のテクニックとは比較にならないほどの深い叡智が必要です。社会的通念から見ると一見善行に見えることが、カルマの法則ではほとんど善行としての意味がなかったり、時には悪行であることすらあります。このカルマの法則の運用法こそ、ヤギャを含む全ての開運術の本質ともいえます。

●供養の作法

 供養の作法を知っている必要があるのは、儀式という形の違いによってヤギャの効果が変わっていくからです。それはテレビ放送の受信において、VHS、UHF、BS とそれぞれの放送に使用する電波の性質により、使用するアンテナの形状を変える必要があるのと似ています。

 インド占星術の処方に使用するヤギャにおいても、ポイントとなるハウスや惑星、そして得たい結果などにより、多様なヤギャの作法が存在します。

●ヤギャの原型となる五つのヤジュニャ

 ヤギャの原型は、ヤジュニャとよばれるヴェーダの祭祀にあります。ヤジュニャは祭火を囲み供物を火の中に投げ入れる供養法で、供物は本人の愛用している品々が使用されました。このヤジュニャは日本の真言密教に伝わっている護摩法の原型と言えるような供養法です。

 一般の家庭で行われてきたヤジュニャは、スートラによって規定されたマハーヤジュニャという五つの供養法です。それは三つのヤギャに、ヴァイシュヴァディーヴァとブラフマヤジュニャが加わったものです。

 ヴァイシュヴァディーヴァは、一切の神々の供養のために昼食の前に火祭をおこない、食物の一部を取って火中に投ずる儀式です。

 またブラフマヤジュニャは、ヴェーダの聖句(マントラ)の朗詠を神に供養する儀式です。したがってマハーヤジュニャを原型とするヤギャの処方の中にも、聖句の朗詠や護摩法などが含まれています。

聖句の紹介

 ヤギャはヒンドゥー教の供養法であるため、現代の日本人には親しみが少なく簡単に実践し難いところがあります。そこで参考として、岩波文庫の「ブッダのことば−スッタニパータ−(中村元訳)」に収められている「慈しみ」という短い経典を紹介します。

 この経典はタイやスリランカなどの南伝仏教では特に重要視されており、現在でも護呪(パリッタ)として幸福を願い危険から身を守るために唱える経典のひとつとなっています。この「慈しみ」という護呪(パリッタ)は、タイやスリランカなどの南伝仏教の国々で、ヤギャの役割をしている仏教経典といえます。

 この聖句を毎日回数を決めて唱え始め、その回数の合計が一定の回数を超えれば、一般的な開運や厄除けとして高い効果があることは、心理学的な深層意識のメカニズムからも十分予測が可能です。現代日本人にとっても抵抗感の少ない詩句の内容であり、汎用的な開運術として使えるヤギャの一つでしょう。

慈しみ


 究極の理想に通じた人が、この平安の境地に達してなすべきことは、次のとおりである。

 能力あり、直く、正しく、ことばやさしく、柔和で、思い上がることのない者であらねばならぬ。

 足ることを知り、わずかの食物で暮らし、雑務少なく、生活もまた簡素であり、諸々の感官が静まり、聡明で、高ぶることなく、諸々の(ひとの)家で貪ることがない。

 他の識者の非難を受けるような下劣な行いを、決してしてはならない。

 一切の生きとし生けるものは、幸福であれ、安穏であれ、安楽であれ。

 いかなる生物生類であっても、怯えているものでも強剛なものでも、悉く、長いものでも、大きなものでも、中くらいのものでも、短いものでも、微細なものでも、粗大なものでも、

 目に見えるものでも、見えないものでも、遠くに住むものでも、近くに住むものでも、すでに生まれたものでも、これから生まれようと欲するものでも、一切の生きとし生けるものは、幸せであれ。

 何ぴとも他人を欺いてはならない。たといどこにあっても他人を軽んじてはならない。

 悩まそうとして怒りの想いをいだいて互いに他人に苦痛を与えることを望んではならない。

 あたかも、母が己が独り子を命を賭けても護るように、そのように一切の生きとし生けるものどもに対しても、無量の(慈しみの)こころを起すべし。

 また全世界に対して無量の慈しみの意を起すべし。上に、下に、また横に、障害なく怨みなく敵意なき(慈しみを行うべし)。

 立ちつつも、歩みつつも、坐しつつも、臥しつつも、眠らないでいる限りは、この(慈しみの)心づかいをしっかりとたもて。

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