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談 話 室

2003.10.07

トロピカル12星座とは何か?

桃井 「こんなメッセージが来ていますが、岩田先生はどう思われますか?」

メッセージ
 「アヤナームシャについて、質問があります。ラヒリによると、西暦285年にトロピカルとサイデリアルの星座帯が一致していたことになってます。
 しかし、春分点が魚座に移行したのは、西暦紀元前後と言われてますし、プラトンやプトレマイオスが生存していた時にはもうすでに、牡羊座0度が春分点とされていたのではないでしょうか?
 すると、少なくとも紀元前には春分点は牡羊座0度に位置していたことになるのではないでしょうか?」

岩田 「このメッセージの質問は、最初は西洋占星術から入って、インド占星術のようなサイデリアル12星座を使う占星術を学び始めた人に共通する質問だと思う。

 私自身はこの『西暦285年にトロピカルとサイデリアルの星座帯が一致していた』という表現は誤解を招きやすく、インド占星術家も含めて多くの占星術家が、トロピカル12星座とサイデリアル12星座の本質的違いを理解できなくなっている原因だと思うんだ。」

桃井 「それはどういうとですか?」

岩田 「『西暦285年にトロピカルとサイデリアルの星座帯が一致していた』という表現は、トロピカル12星座とサイデリアル12星座を同じ次元のシステムとして扱っている表現だ。
 しかしトロピカル12星座は、地球の公転運動の軌道と自転運動の軌道の交点である春分点を起点とする天空の分割システムで、サイデリアル12星座は、銀河系の恒星群を目印とする二つの天空の分割システムを統合したものだよね。」

桃井 「二つの天空の分割システムというのは?」

岩田 「それはサイデリアル星座の12分割と、密教占星術では二十七宿と呼ばれているナクシャトラの27分割のことだね。インド占星術で極めて重要な位置を占めているヴィムショタリ・ダシャーやヨーギニー・ダシャーが、月の位置するナクシャトラの度数で決定されているように、ナクシャトラの27分割は、星座の12分割と同じくらい重要な天空の分割システムだと言える。」

桃井 「ナクシャトラは普段あまり表に出てきませんが、インド占星術を深く研究していくためにはとても重要な知識ですね。」

岩田 「サイデリアル12星座やナクシャトラ27宿は、恒星群を目印に天空を分割するシステムであるから星座や星宿という名前は適切であると思う。それに対してトピカル12星座は、サイデリアル12星座の中を約2万6千年かけて一周する軌道交点である春分点を起点として、天空を12分割するシステムだ。

 したがってトロピカル12星座の本質は、『星座』、つまり恒星群の天空座標ではなく、24時間かけてサイデリアル12星座を一周するアセンダントを第1室の起点として、天空を12分割するプラシーダス・ハウスなどと同様の、太陽系の天体運動に依存した天空の12分割システムということになる。

 言い方を変えるならトロピカル12星座の本質は、『ハウス・システムの一種』であって、『星座』ではないということだね。」

桃井 「トロピカル12星座が、プラシーダス・ハウスと同じようなハウス分割方法で、しかも春分点もアセンダントと同様に、12ハウスの起点となる目印だというのは、驚くべき見解ですね・・・・。」

岩田 「トロピカル12星座がハウス・システムの一種であるなら、トロピカル12星座の起点が、時間の経過と共に星座を移動していくというのは、アセンダントが1日で12星座を移動するのと同じことで、当り前すぎる現象だ。
 
 だからトロピカル12星座・・・・、というよりはトロピカル12ハウスというのが正しいんだけど、いわゆるトロピカル12星座とサイデリアル12星座のどちらが正しいとか言う主張は、意味のない主張なんだ。
 したがってサイデリアル12星座は科学的に信頼度がなく、トロピカル12星座は科学的であるなどと主張するとしたら、その人の占星学がまだ学問としては未熟な方法論しか持ち合わせていないことを表明するに等しい。
 逆にサイデリアル12星座は当たるから正しく、トロピカル12星座は役に立たない技法だと主張するのは、技法の本質に対する理論的考察のない信念的主張だと思うね。

 私自身はトロピカル12星座の本質が、ハウス・システムの一種だという認識さえあれば、西洋占星術の発明した占星術技法の中でも、トロピカル12星座は研究の必要な興味深い技法であると評価しているんだ。」

桃井 「その辺は、インド占星術至上主義とは異なる、東西占星術研究所の独特なスタンスですね。

 でも1日で天空を一周するアセンダントの移動と、26000年で天空を一周する春分点の移動を同じ理論構造として理解するという発想は、やっぱり驚いてしまいます。」

岩田 「まあ、今回のテーマについては談話室というコンテンツの性質上、話の展開がちょっとラフだったから、『検証、西洋占星術』というコンテンツでも新設して、もう少し丁寧に論証した方がいいのかもしれないね。」

桃井 「私も今日聞いた考え方を使って、トロピカル12星座について考察してみます。」

2003.09.19

続・出生時刻談義(出生時刻の正しい定義は?)

岩田 「ところで桃井君は、『出生時刻をどう定義するするんですか?』と聞かれたら、どんな風に答える?」

桃井 「えーっと・・・・。確かにそう質問されると、出産のどの時点を出生時刻とするかについては曖昧にしていたことに気がつきますね。
でも、『母体から出終わった瞬間』とか、『へその緒が切られた瞬間』じゃないかとは思います。」

岩田 「インド宗教では、サマディと呼ばれる呼吸停止の状態に至る高い瞑想状態は、人間のカルマから解放され人間を超越した状態であると考える。
 そうであるなら、逆に人間のカルマを読み取る技法である占星術が、使用しなければならない出生時刻は、その人が呼吸開始によって、今生の人間としてのカルマに制約される瞬間ということになる。

 それから、赤ちゃんの呼吸開始によって腹筋が収縮し、赤ちゃんとへその緒のつながりが閉じられると言うから、呼吸開始の瞬間は母体との絆が断たれ、赤ちゃんが生物的に独立した個体としてスタートする瞬間とも重なることになる。」

桃井 「そのような考えで、みんなが母子手帳に出生時刻を記録しているわけではないでしょうから、母子手帳に分単位で記録された出生時刻でも、占星術的に正確な出生時刻とずれる場合が多いということになりますね。」

岩田 「従って、かなり信頼度が高いと思われる出生時刻であっても、ドヴァダシャームシャより細密な分割図では、アセンダントの位置に関しては慎重に取り扱う必要があるんだ。」

桃井 「それから、呼吸の開始が今生の人間のカルマのスタートと言うのは、昔から呼吸の停止が人間の死、つまり人間としてのカルマの終わりとイコールとして語られていることと合わせて、とても意味の深い見解ですね。」

岩田 「このインド宗教や中国仙道にも共通する見解には、一般的な理解レベルより深遠な意味があるんだ。だから、パタンジャリのヨーガ・スートラなどのヨーガ経典や仙道経典を研究している人は、この呼吸という誰もがおこなっている行為の中に、究極の開運術の根本原理を見いだすことになるかもしれないね。」

a-News 2.32



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