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談 話 室

2004.04.27

5室の象意

桃井 「岩田先生、トリコーナ・ハウスと法則のハウスの第5室が、子供や出産のハウスになるのはどうしてですか?」

岩田 「突然の質問だけど、ある意味でハウスの象意について、単なる丸暗記しないで、本質的なものを理解しようと考えているのが判る質問だね。

 5室は恋愛や娯楽のハウスという側面と、学問や知性のハウスの側面、さらに子供や出産のハウスという側面があるけど、どうしてこの三つが同じ第5室なんだろうと考えるのは、東西占星術研究所の研究員として必要な思考パターンではあるね。」

桃井 「たしかに、恋愛と娯楽が同じハウス、学問と知性が同じハウスというのは分りやすいんですけど、恋愛、娯楽、学問、知性が同じハウスというのも、『何でかな?』と思いますね。」

岩田 「まあ、談話室だから最初の質問に話題を戻して、シンプルに話を進めよう。桃井君は5室が子供や出産のハウスである理由について、何か考えついた事はあるのかな?」

桃井 「ラオ氏の本を読むと、5室は過去生の功徳を表すハウスで、子供というのは、過去生の功徳によって与えられるものだと書いてあるんですけど、『そうなのかなあ・・・。』という感じです。」

岩田 「その解釈は、インドの文化を生きている人だったら実感出来ても、現代の日本人はピンとこないかな。でも死語に近くなっているけど、日本にも『子宝』という言葉があるんだから、1〜2世代前くらいの日本人なら、かなりの人が納得できたと思う。」

桃井 「たしかに実際に親になった人は、今でも実感できるのかもしれませんねぇ・・・。」

岩田 「まあ、インド占星術でも西洋占星術でも、5室は子供や出産のハウスで、当然のことながら妊娠のハウスにもなるんだね。妊娠は英語では、コンセプション(conception )になるけど、コンセプションには妊娠や胎児という意味以外にも、『心に抱くこと』という共通性がある、想像・着想・概念・考え、などの意味があるんだね。

 5室の学問は、出来あがっている知識を入れるという意味の学問ではなく、自分の学説という新しい知識を生み出すという意味の強い学問なんだ。したがって5室の色々な象意は、『自分が生み出すもの』というより基本的な象意に還元出来るとも言える。」

桃井 「そういえば、コンセプション(conception )の名詞形、コンセプト(concept )は、もうカタカナの日本語になってますね。

 いまの説明は、岩田先生が普段言っている、『4室も5室も教育のハウスだけど、教育の内容が違う』というお話とリンクしていくと、なるほどと納得するものがあります。」

岩田 「教育には、外部から知識を入れるという教育もあるけど、エデュケーション(education )が、dure 、つまり導き出すという語源から来ているように、自分の内側から知識を導き出すような訓練が、教育の最終的な段階になると思うんだ。

 つまり4室の、既存の知識を検討することなく、正しいものとして入れるという教育をベースとして、5室の自分の内側からオリジナリティーのある知識を生み出す訓練、つまり大学などの高等教育に入っていくというのが、教育のプロセスだと思う。

 もっとも日本の大学教育はいまだに明治以来の、4室的教育の要素が強いんだけどね。」

桃井 「今回の談話室で、学問と知性、子供と出産の関連が、かなりすっきりしました。でもそこに恋愛と娯楽がどう関連していくのかは、まだはっきり見えませんね。」

岩田 「それについては、もうすこし自分で考えてごらん。桃井君の研究員としてのトレーニングになるから。」

桃井 「はい、私も5室のエデュケーションを鍛えてみます。」



2004.03.29

続スピリチュアル・アストロロジー談議

桃井 「前回の談話室で、金星にも宗教を飾る以上のスピリチュアリティーがあることは分りました。
 そうすると、10室に在住する金星でも『これ見よがしの宗教生活』以上の意味合いがあるんでしょうか?」

岩田 「そうだね。10室の金星は一般的なリーディングとしては、財や名声を意味するから現世的な成功にはもともと良い配置だよね。実際の鑑定でも芸術的センスを必要とする専門職に就いている人が多いという印象がある。

 私が占星術研究の交流をしている関西在住の占星術家は、10室の金星は演技が上手いと言っているけど、この辺の特徴をラオ氏のストイックな宗教性から見ると『これ見よがしの宗教生活』と感じてしまうんだろうね。しかしそれを偽善的だと非難するのは、正確な認識ではないと思っている。」

桃井 「演技が上手いというのは、偽善的というのとは意味が違うんですか?」

岩田 「私は『演技が上手い』と『偽善的』とは、異なった意味の言葉として認識しているけど、『演技が上手い=偽善的』という考え方も、人々の間で根強いものがある。

 例えば、日本語訳の新約聖書で『偽善者』と訳されている『ヒュポクリテース』という言葉は、普通に訳せば『俳優』というのが正しくて、聖書の文脈からすれば『演技者』と訳すのが正確にニュアンスを伝えられるというようなことを山本七平氏が書いていたね。

 マタイによる福音書の6章に、
 『祈るときにもあなた方は、偽善者のようであってはならない。偽善者たちは、人に見てもらおうと、会堂や大通りの角に立って祈りたがる。言っておく。彼らは既に報いを受けている。だから、あなたが祈るときは、奥まった自分の部屋に入って戸を閉め、隠れたところにおられるあなたの父に祈りなさい。』
 とある。この中の偽善者を演技者と訳し直すと、『彼らは既に報いを受けている』という表現には、『彼らは内心では全く信仰を持たない偽善者ではなく、真剣で誠実な演技者として真面目に祈っているから、そこに功徳の果報はある。でもね・・・・』というニュアンスになるんだね。

 だから人目という舞台に上っている間、好ましい行為で観客をもてなそうとする真摯な演技者であることは、それはそれで評価すべきだと思う。でも時代の変化、周囲の批判、経済的窮乏などの逆境に耐えて、自己の信仰を貫く強さは生来的凶星の力が必要となる。

 この社会の常識や伝統に逆らっても自己の信じる真理を貫く強さは、生来的吉星の金星、それにスピリチュアルで理想主義を貫こうとする木星であっても求めるのは難しいね。」

桃井 「それは『スピリチュアル・アストロロジーにおいては、惑星にもハウスにも本質的吉凶はない。』という見方の重要な実例ですね。

 ところで私の友人の女性に、10室魚座の高揚の度数にとても近い金星の持ち主がいるんです。でも鋭く繊細な感受性があって、けっこう生きていくが大変だなという感じなんで、これ見よがしというアクの強さは感じないんですけど。」

岩田 「その人の金星は、凶星による傷付きがあるんじゃないかな?」

桃井 「あっ、そのとおりです。」

岩田 「魚座の金星は、豊かな感受性や情緒なども意味するけど、それが凶星で傷付くとその感受性ゆえに人並み以上の辛さも味わうことがあると思う。そのため受けの良いパーソナリティーで、内面の繊細さを隠すという生活の技術を身につける人もいる。

 それが10室の金星の演技の上手さと重なると、ラオ氏のように鋭く厳しい人には、『これ見よがし』とか『偽善的』とかにとられるんだろうね。」

桃井 「10室金星のパーソナリティーの、深い部分を読み取ろうとするのは、なかなか大変ですね。」

岩田 「10室魚座の金星は、国際政治の修羅場に生きる政治家にもあったりするけど、その場合はまた別の意味がある。そういう意味では、インド占星術というのは一生勉強して一生上達していくだけの深さと広がりがある思う。」




2004.03.21

スピリチュアル・アストロロジー談義

岩田 「桃井君、スピリチュアル・アストロロジーにおいて、金星はどのような役割をすると思う?」

桃井 「金星ですか、K.N.ラオ氏の『Learn Hindu Astrology Easily(邦訳 ラオ先生のやさしいインド占星術−入門編−)』には、『I have seen hundreds of men and women with Venus in the 10th house becomeing more showy than sincere in spiritual pursuits.(10室の金星は、精神世界に対する誠実な探求よりは、これ見よがしの宗教生活になる)』って書いてありますから、マイナスの役割になるじゃないんですか?」

岩田 「相変わらずラオ氏は過激で辛辣なことを言うね。

 確かにラオ氏の本を読むと、木星とケートゥは解脱の表示体として高い評価を与えているし、ラオ氏のジョーティッシュ・グルは水星にも高い評価を与えている。
 それに対して金星の良い面として、『Love for religious songs, love to decorate religious places and compose music for particularly female goddesses.(宗教的な歌を愛し、聖なる空間を飾ることを好み、また神々や、その中でもとりわけ女神に対する賛歌をつくる。)』と書いているけど、『これ見よがし』発言の後のフォローとしては、ちょっと苦しいね。」

桃井 「金星の表す芸術で宗教的なものを飾るくらいしか、金星のスピリチュアル・アストロロジーにおける役割って無いんですか?」

岩田 「今回、スピリチュアル・アストロロジーにおける金星の役割を談話室に取り上げようと思ったのは、某ヨーガ・アシュラムに招かれて集中的に鑑定をおこなった時に、金星のスピリチュアルな意味合いについて、これまでより理解が深まったからなんだ。」

桃井 「先日の招待ですね。」

岩田 「日本でヨーガと言うと、一般にはインド式健康体操という認識が優勢だと思うけど、ラーマクリシュナ・パラマハンサやスワミ・ヴィヴェーカーナンダの本や記事を読んだ人は、バクティ・ヨーガ、カルマ・ヨーガ、ギャーナ・ヨーガという三つのヨーガがあることを知っていると思うんだ。
 また、佐保田鶴治氏の翻訳ヨーガ経典を読んだことのある人は、ラージャ・ヨーガやハタ・ヨーガというヨーガがあることを知っているよね。

 これらのヨーガの中でバクティ・ヨーガと金星には、本質的な意味で深い関連があるのを何回か確認している。」

桃井 「ヴィヴェーカーナンダの『バクティ・ヨーガ』と言う本は、副題が『愛と信仰のヨーガ』ですよね。とても素敵な表現なんで印象に残っています。
 たしかに金星が、愛と信仰のヨーガと深い関係があるというのは、とても自然に納得出来ますね。」

岩田 「出生チャートでバクティ・ヨーガを表している惑星配置の例としては、5室に金星と木星が在住やアスペクトしているケースとかは、典型的なバクティ・ヨーガのチャートと言える。
 5室には神々に対する熱愛と献身という意味があり、その5室に愛情を表す金星と宗教性を表す木星が同室している惑星配置は、インド占星術におけるハウスや惑星の象意を組み合わの結果として、自然とバクティ・ヨーガを表すことになる。

 実際、バクティ・ヨーガ的な信仰生活を送っている女性には、5室に金星と木星のアスペクトや在住があるチャートの持ち主が多いことを確認しているから、この解釈はかなり有効だと思うよ。」

桃井 「5室や木星とコンビネーションを組んでいない金星は、スピリチュアルな意味を持っていないんですか?」

岩田 「たとえばインド占星術の本を読むと、7室や12室に在住する金星についてはあまり良い意味が書かれていないよね。でも今回招かれたアシュラムの集中的な鑑定で、7室や12室の金星にもスピリチュアルな意味があることに気付いたんだ。
 ダルマ・ハウス以外の7室や12室に在住する金星でも、スピリチュアルな生活に生かすことが可能なことが、実際に確認出来たのは大きな収穫だったね。

 これは普段から言っている『スピリチュアル・アストロロジーにおいては、惑星にもハウスにも本質的な吉凶はない。』というテーゼの真実を示していると思うんだ。」

桃井 「7室や12室の金星って、インド占星術の古典を読むと不倫とか、それに類した意味が載っているので、自分のチャートの7室や12室に金星のある女性って、けっこう悩むんですよね。」

岩田 「インド占星術は強力なだけに、技法を中途半端な理解で使ったり、本の記述する意味をそのまま使ったりすることによって、偏った一面的なリーディングをおこない、自分が悩んだり、人を傷つける可能性も高いのは確かだね。」

桃井 「そういう意味では、インド占星術を学ぶ人には『スピリチュアル・アストロロジーにおいては、惑星にもハウスにも本質的な吉凶はない。』という言葉を、心にとめておいて欲しいですね。」

a-News 2.32



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