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談 話 室

2004/09/07 (火)

東西ハウス談議(プラシーダス、キャンパナス、etc.)


桃井 「岩田先生、『インド占星術の秘法』って、ホロスコープの12ハウスが東西占星術研究所と違って、西洋占星術のハウスみたいにアセンダントが1室の起点で、MCが10室の起点なんですけど、そこからまた接合点というのを計算していて、どうもよくわからないんですけど?」

岩田 「そうか、桃井君はあの本をしっかり読んだようだね。

 『インド占星術の秘法』は羽田先生もお気に入りだった本で、私もよく人に薦めることがある本だけど、実占例のホロスコープ解説がほとんど掲載されていないためか、東西占星術研究所と異なるハウス・システムを採用しているんじゃないですかと、質問して来る人は少ないね。

 東西占星術研究所では、アセンダントの在住している星座を、そのまま12ハウスの第1室として採用する『星座=ハウス』のハウス・システムを採用しているから、12星座と12ハウスの境界が一致している。

 ところがインド占星術には、アセンダントの位置する度数を、第1ハウスの中央の度数として、12ハウスに区分するハウス・システムもあって、北インド方式のホロスコープを採用しているインド占星術家は、『アセンダント=第1室の中央』のハウス・システムを採用している場合が多い。

 『インド占星術の秘法』のように、『アセンダント=第1室の中央&MC=第10室の中央』が成立するように、12ハウスの度数を不均等に分割する方法は、惑星の強さを評価するんだね。」

桃井 「西洋占星術では、12ハウスをアセンダントとMCで不均等に分割するハウス・システムを使ってますね。」

岩田 「うーん、日本で紹介されている西洋占星術は、ほとんどが『アセンダント=第1室の起点&MC=第10室の起点』というプラシーダスをハウス・システムとして採用してるけど、実のところ西洋占星術には、インド占星術と比較にならないほど、いろいろなハウス・システムが存在しているんだ。

 小曽根氏は、『Stargazer for Windows ではじめるパソコン占星学』で、『アセンダント=第1室の中央&MC=第10室の中央』という北インドと同じコンセプトを採用しているハウス・システムを『キャンパナス』という名前で紹介し、『幾何学的に最も美しい』と言っている。

 また秋月氏は、『個人的にはキャンパナス・ハウスシステムを支持します。』と『正統占星術入門』で書いてる。だから西洋占星術の世界もかなり、なんでもありに近い世界といえる。

 それに、プラシーダスは出生場所が高緯度地帯になるほど各12ハウスの度数配分が、極端に不均一になるという欠点がある。そのため、日本や米国より高緯度地帯に属する英国やドイツでは、プラシーダス以外のハウス・システムも採用している占星術家も多い。

 たとえば英国で多く併用されている『イコール・ハウス』というハウスシステムは、アセンダントを第1室の起点として360度の天空を30度に均等分割して、12ハウスを構成するハウス・システムだ。」

桃井 「日本では西洋占星術の本がたくさん出ていますけど、プラシーダス以外のハウス・システムの作り方や使い方が紹介されることって、とても少ないと思います。」

岩田 「プラシーダスは、室項表を使って簡単に12ハウスの境界が出せるという便利さによって、広く普及してしまったという面があるようだ。
 でもホロスコープはパソコンで作成するのが常識になっていくと、日本の西洋占星術でも、もっと色々なハウス・システムや占星技法が使われるようになるだろうね。」

桃井 「インド占星術もパソコンの占星術ソフトがあるから、分割図やアシュタカヴァルガを使ったリーディングも簡単に出来ますけど、手計算でホロスコープを作っていたら、ホロスコープの作成だけで一仕事ですね。」

岩田 「でも本当は、ラーシ・チャートがしっかりと読めるなら、あとはヴィムショタリ・ダシャーを使うだけで、立派な鑑定書が書けるだけの深いリーディングが出来る。

 ところが今は、占星術ソフトが自動的にいろいろな技法を表示するので、逆にラーシ・チャートをしっかり読める前にいろいろな技法に走って、基本的なリーディングの力がなかなか育たないケースが多くなっていると思うんだ。」

桃井 「東西占星術研究所の初級講座テキストが、ラーシ・チャートをしっかりと読むために必要な知識を絞り込んで丁寧に解説し、有名人のホロスコープによる豊富な実例を入れているのは、そういう基本的なリーディングの力を養うことにポイントを置いているからなんですね。」

岩田 「インド占星術の基本技法にハウス展開の技法をミックスするなら、ラーシ・チャートだけでも面白いように色々なことが読めるという感動を味わうためには、基本的技法をしっかり理解しておく必要があるからね。」

桃井 「ハウス展開の技法を高度に使いこなすリーディング・スタイルは、羽田先生の時代から続く東西占星術研究所の伝統的特徴ですから、初級講座から高度なハウス展開の技法を丁寧に解説するというのも、いかにも東西占星術研究所らしいテキストの構成ですね。」

岩田 「話を少し戻して、プラシーダスについてもう少し話しておこうか。
 高緯度地帯では12ハウスの大きさがアンバランスになるプラーシダス・システムの特徴というか欠点は、裏を返せば、プラシーダスが低緯度地帯に住んでいる人ほど使いやすいハウス・システムであるということだ。

 これが、西欧に比較すると低緯度地帯に位置する日本や米国で、プラシーダスが多用される理由の一つだと思う。

 でも低緯度地帯といったら、日本や米国より赤道に近いインドこそ、低緯度地帯の典型になる。だからインド占星術の中にはKPという、プラシーダス・ハウスをそのまま採用している流派も存在しているんだ。」

桃井 「えっ、ハウスに西洋占星術と同じハウス・システムを採用しても、インド占星術になるんですか?」

岩田 「KPと呼ばれているクリシュナムルティの占星術体系は、サイデリアル12星座と27ナクシャトラで天空を区分する。
 使用する支配星も、12星座は伝統的な7惑星、ナクシャトラはラーフ&ケートゥを追加した9惑星で構成されてるから、その本質はインド占星術だね。

 でも、アヤナムシャはクリシュナムルティ・アヤナムシャという独自のアヤナムシャを採用し、ラーフ&ケートゥの位置はミーン・ノードを採用しているし、なんといっても12ハウスにプラシーダスを採用している。

 そのほかにも、伝統的なインド占星術とは違うリーディング・メソッドが多いから、かなり革新的・前衛的なインド占星術の流派だとは言える。」

桃井 「そういう、インド占星術もあるんですね・・・。」

岩田 「ハウス・システムについては、もう少し話すことがあるけど、今回はけっこう話が長くなっているから、今日はこの辺で終わりにして、次回にまわそうか。」

桃井 「はい。」

2004/08/12 (木)

沙羅のティー・ルーム(パブロ・ピカソNo.3)

沙羅 「これが、パブロ・ピカソのシャシュテァームシャ・チャート。つまり60分割図ね。」

桃井 「60分割図って、ラーシ・チャートやナヴァームシャ・チャートに匹敵する重要な分割図だとインド占星術の古典には書いてあるのは知ってますけど、実際のリーディングに使われることって、ほとんどないですよね。
 60分割図って、30度を60の星座に分割して惑星を再配置するんですから、惑星の位置とかの信頼性ってだいじょうぶなんですか?」

沙羅 「動きの速い月でも、約1時間かけてシャシュテァームシャ・チャートの1星座を通過するから、出生時間が5分単位で正確ならアセンダント以外の惑星は、問題なく使えるよ。

 それからアセンダントは、約2分で1星座を通過するから、アセンダントの位置が使える場合だってけっこう多いのよ。」

桃井 「岩田先生は、ピカソの出生データは出所の信頼性も高いし、出生時間も時刻修正無しで十分研究に使えると言ってましたから、かなり正確なんでしょうね。」

沙羅 「まあ、ピカソの場合はアセンダントまで使っても大丈夫なんじゃない。でも今日教えるのは、月の位置が使えれば十分だから、わりと使いやすい技法よ。
 ただ減衰の惑星がいっぱい無いと出番のない技法だから、使う機会は少ないけどね。」

桃井 「減衰の惑星だらけの有名人が、いっぱいいたら大変ですからね。」

沙羅 「ラーシ・チャートで減衰の惑星が二つ以上あって、シャシュテァームシャ・チャートで減衰の惑星が、生来的吉星の支配する星座に位置していると、偉大な王になるというマイナーな法則があって、実はこれが結構作用しているのよ。

 パブロ・ピカソのシャシュテァームシャ・チャートも、ムーラトリコーナの星座に位置する土星以外は、すべて生来的吉星の星座に入っているから、この法則がかなりきれいに成立しているのね。」

桃井 「たしかに土星以外の惑星はアセンダントも含めて、きれいに生来的吉星の支配する星座に集まっていますね。」

沙羅 「この、減衰惑星がラーシ・チャートにいっぱいあって、シャシュテァームシャ・チャートでは吉星の支配する星座やムーラトリコーナに惑星集中するパターンは、意外と強力なラージャ・ヨーガになるみたい。」

桃井 「ほかにもそういう有名人って、いるんですか?」

沙羅 「たとえばメジャー・リーグの野茂は、ラーシ・チャートで月・火星・金星・土星が減衰の星座、シャシュテァームシャ・チャートで月・金星・土星が吉星の支配する星座、火星はムーラトリコーナの牡羊座だから、この法則のきれいな実例のひとつ。」

桃井 「20世紀最大の画家の金星が減衰していたり、メジャー・リーグで二回のノーヒット・ノーランを達成した偉大なプロ野球選手の火星が減衰してたりすると、けっこうこまっちゃいますけど、こういう法則もあるんですね。」

沙羅 「まあ、岩田先生のリーディング・スタイルなら、この法則を使わなくても、ピカソの金星や野茂の火星はきれいに説明できるし、そっちの方が深遠なんだけど、こういう裏技的一発勝負の技法で、あざやかな結果が出るというのが、インド占星術のおもしろいところよね。」

桃井 「ふだんは出番のないシャシュテァームシャ・チャートにも、こんな技法があるというのは、インド占星術の古典に存在する膨大な技法には、まだまだ味わい深い技法がいっぱいあるということなんですね。」

沙羅 「理論的な重要さや深みのある技法じゃないけど、話のネタとして談話室に取り上げるには、わかりやすいし、とても面白い技法ね。」

2004/08/11 (水)

沙羅のティー・ルーム(パブロ・ピカソNo.2)

桃井 「沙羅先輩、ピカソって、減衰の惑星大集合!って感じの、とんでもないホロスコープなんですね。」

沙羅 「そうね、金星だけでなく、太陽・月・土星・ラーフ・ケートゥの6惑星がラーシ・チャートで減衰の星座に入っている超有名人という意味では、パブロ・ピカソは絵画史上だけでなく、占星術的にも20世紀最大の怪物というニックネームがふさわしいかもね。」

桃井 「ナヴァームシャ・チャートを見たって、高揚している惑星は一つも無いし、逆にラーシ・チャートで減衰してない木星まで、減衰の星座に入っていますから、もうどうなってんですか?という感じですね。」

沙羅 「高揚・減衰っていうのは、一番わかりやすくて基本的な技法だから、ラーシ&ナヴァームシャ・チャートでこんなに極端な減衰の固め撃ちをくらうと、中級レベルの人でも立ち直れないわよねぇ。」

桃井 「ラーシ&ナヴァームシャ・チャートで定座以上の惑星は、ナヴァームシャ・チャートでムーラトリコーナの牡羊座に入っている火星だけですから、火星以外の惑星は全滅という感じですよね。」

沙羅 「でも、それだけじゃ済まないよ。何しろラーシ&ナヴァームシャ・チャートでケンドラ・ハウスに在住している生来的吉星は、ラーシ&ナヴァームシャ・チャートで減衰している月だけなんだから。」

桃井 「その他でケンドラ・ハウスに在住している惑星は、生来的凶星で減衰している土星と太陽ですから、もう止めを刺されたという感じですね。」

沙羅 「まっ、星座だけでなくハウスの在住を検討してもこれじゃあ、やっぱりパブロ・ピカソは20世紀最大の怪物だったという結論よね。」

桃井 「うーん、確かにその通りですけど、それで納得していいんでしょうか?」

沙羅 「私は、岩田先生がパブロ・ピカソのラーシ&ダシャームシャ・チャートを分析して社会的成功の理由を解説するのを聞いているから、ピカソの社会的成功が占星術的に説明が可能だというのは知ってるけど、まあ正攻法の解説が知りたいなら岩田先生に聞くことね。

 でも、一発勝負的な裏技を使った説明方法もあるから、この次はそれを解説してあげるわ。」

桃井 「はい、楽しみにしています。」

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