談 話 室
2003.11.29
● ガンダーンタの領域桃井 「岩田先生、ガンダーンタって、一体何度までの度数になるんですか?」
岩田 「それじゃあ桃井君、君の知っているガンダーンタの定義を言ってごらん。」
桃井 「蟹座と獅子座の境界、蠍座と射手座の境界、魚座と牡羊座の境界、という3ヶ所に位置する惑星は、ガンダーンタの領域に入ることになり、その惑星には危険が存在するということは知っています。」
岩田 「それじゃあ、どうしてその三つの境界線だけが、ガンダーンタとして危険な領域になっているのか理由を想像出来るかな?」
桃井 「えーっと、12星座の境界線の中で、この三つの境界線に共通する占星術的要素を見つければいいんですね。」
岩田 「そのとおり。」
桃井 「・・・・・・。 一つ発見したのは、この三つ境界線は『火・地・風・水』という、12星座のエレメントの1サイクルと対応しています。」
岩田 「うん、その発見もなかなか重要だね。ガンダーンタは水のエレメントの星座と火のエレメントの星座の境界線で、星座のエレメントが最も激しく変化するから、危険な領域なんだと解釈している占星術家もいるよ。 この場合は、星座の境界線両側1°とか、境界線両側30′とかが、ガンダーンタの領域という解釈になるのかな。」
桃井 「エレメントの1サイクル以外にも、この三つの境界線に共通する占星術的要素があるんですか?」
岩田 「もう一つの重要な占星術的要素として、この三つの12星座の境界線は、同時に27ナクシャトラの境界線とも一致しているということだね。」
桃井 「えっ、・・・・・。 確かにアーシュレーシャーとマガー、ジェーシターとムーラ、レーヴァティーとアシュヴィニーの境界線に一致していますね。」
岩田 「この12星座と27ナクシャトラの境界線が一致する所が、ガンダーンタという見地からすれば、ガンダーンタの領域はナクシャトラの構成単位である1パダということになるね。」
桃井 「1パダは3°20′ですから、ガンダーンタの領域は境界線の両側、各3°20′ということになりますね。」
岩田 「日本語にも翻訳されている、ラオ氏の『Learn Hindu Astology Easily 』でも、母親の自殺した男性のチャートで、魚座の28°35′の月をガンターンタと言っているから、ガンダーンタの領域は星座の境界線両側1°以上は見る必要があると思うね。」
桃井 「でも、両側1パダというとかなり広い領域ですね。」
岩田 「私は実占にガンターンタを使う時、3°20′までは考慮するけど、重要視するのは1°30′以内の領域にしている。」
桃井 「1°30′というのは、どういう理由ですか?」
岩田 「より正確に言えば、3°20′、2°30′、1°30′という3段階だね。この三つの度数の意味を考えると、その理由も分かるから桃井君の宿題にしよう。」
桃井 「はい、考えてきます。」
2003.10.21
● トロピカル12星座の支配星とは何か?岩田 「しばらくトロピカル12星座の談話室が続いたけど、最後にトロピカル12星座の支配星について話してみようと思うんだ。」
桃井 「最後ですか?」
岩田 「このテーマに関して見解を述べると、どうしても論争の色合いを帯びてしまうから、トロピカル12星座に関する談話室は、出来れば今回を最後にしたいんだ。でもここまで見解を表明した以上、『トロピカル12星座の支配星とは何か?』というテーマも話した方がいいと思ってね。」
桃井 「西洋占星術では、トランスサタニアンの天王星・海王星・冥王星を、水瓶座・魚座・蠍座の支配星として割り当てていますが、『トロピカル12星座とは、星座ではなく12ハウスである』という見解に立つと、魚座の支配星は木星か海王星かという論争以前に、『トロピカル12星座に支配星はあるのか?』という議論になってしまいますね。」
岩田 「そのとおり。でも実は『トロピカル12星座とは、星座ではなく12ハウスである』という見解に立つと、逆に水瓶座・魚座・蠍座の支配星を、天王星・海王星・冥王星ではなく土星・木星・火星とするインド占星術の見解と、天王星・海王星・冥王星を水瓶座・魚座・蠍座に割り当てる西洋占星術を両立させることが可能になるという、意外とも言える結論に達することになるんだ。」
桃井 「それはまた、まったく予想もしなかった意外な見解ですね。」
岩田 「インド占星術では、12ハウスにハウスの表示体を割り当てているのは、桃井君も知っているよね。」
桃井 「はい、12ハウスに各ハウスのテーマを表示する惑星を割り当てて、そのハウスについて検討する時は、結論を出す前に必ずハウスのテーマを表示する惑星の状態について検討するというのは、インド占星術では中級以上のホロスコープ・リーディングとして教えてもらう内容ですね。」
岩田 「そうだね、でもこのハウスの表示体ほどインド占星術家の間で意見が別れる技法は無いといってもいいくらい、それぞれの占星術家が各惑星を各ハウスに割り当てて、12ハウスの表示体として使用している。
したがって12星座の支配星という概念ではなく、トランスサタニアンを12ハウスの表示体として割り当てて、そのハウスの検討をする時にその割り当てた惑星の状態を検討するというホロスコープ・リーディングは、インド占星術のようにサイデリアル占星学派に属する占星術体系と十分共存できる余地があるんだ。」
桃井 「トロピカル12星座の支配星は、星座の支配星ではなく、トロピカル12ハウスの表示体であるということですね。それなら確かに、インド占星術のサイデリアル星座の支配星と正しさを争う必要がありませんね。」
岩田 「優秀なインド占星術家の間でも、ハウスの表示体に関する意見がさまざまに別れ、しかもそれぞれに納得させる根拠を持つということは、ハウスの表示体という概念がもう一次元高いレベルで完成される必要があることを意味しているんじゃないかな。
だから、トランスサタニアンの12ハウスの表示体への導入という研究は、それが最終的に採用されるかはどうか分からないけど、少なくともハウスの表示体というインド占星術の技法を進化させる大きなきっかけになるような気がするんだ。」
桃井 「確かに、海王星→12室の表示体、天王星→11室の表示体、冥王星→8室の表示体、というのは、なんとなく納得できる雰囲気がありますね。特に海王星→12室の表示体、冥王星→8室の表示体、というのは、これから自分のホロスコープ・リーディングに採用してみようかなと思うくらいのはまり役ですね。」
岩田 「もともとインド占星術でもハウスの表示体は、1ハウスと1惑星が対応しているのではなく、1ハウスに複数の惑星が対応しているから、トランスサタニアンを導入するのは大変容易なんだ。
もっとも、複数の表示体をどのように使い分けるかという実占的ノウハウが無いと、表示体が増えるだけ混乱が増大することになるけどね。」
桃井 「そういった意味でも、ハウスの表示体を使用したリーディングは中級以上の占星術技法になってしまいますね。」
岩田 「ハウスの表示体の実占的ノウハウは、そのうち東西占星術研究所の公開講座でやることになると思うけど、その時はトランスサタニアンの研究についても話すことが出来るかもしれないね。」
桃井 「ステップアップ講座のシリーズは、東西占星術研究所の最新研究にも話が及ぶから、楽しみにしていいかもしれませんね。」
2003/10/19 (日)
● コメントが転送されてきました。桃井 「岩田先生、ほかの占星術ホームページに投稿された談話室についてのコメントを、そのHP管理人さんがこちらの参考にと転送してくれました。これがそのメッセージです。」
◇メッセージのパート1◇ 西洋占星術のウラニアン学派では、春分点は、エリーズポイント(牡羊ポイント)と呼ばれています。このエリーズポイントは、肉体を表すポイント(アセンダント同様)として、重視されており、ミッドポイントに含めて使用されています。 これと同じことを先生が自ら発案したのでしたら、それはそれですばらしいことだと思いますが、ウラニアン学派では、何十年も前から、研究され、ふつうに使用されているポイントなので、これを岩田先生の独自見解というには無理があるような気がします。
岩田 「そうか、ウラニアンやマンディーンは知識の空白エリアだったから、これは知らなかったね。ウラニアン学派では春分点を、肉体を表すポイントとして使用しているというのは大変参考になる。それにウラニアン学派が実占で春分点をアセンダントと同様に使っていると言う事実は、『トロピカル12星座イコール12ハウス』という見解が実占での使用に耐えうることを証明してしくれているとも言える。
インド占星術の研究を進めながら、一人で西洋占星術の全エリアをカバーするのは大変だから、こういうコメントを読めるのは、大変有難いね。」
桃井 「コメントには、こんな部分も含まれていますよ。」
◇メッセージのパート2◇ 牡羊座は1室、牡牛座は2室、・・・、魚座は12室に対応するという考え方は、西洋占星術とインド占星術の両方に共通する基礎理論で、ふつうに占星術を勉強した人であれば、誰でも知っている内容なので、特に目新しい独自の見解ではないと思います。たとえば、マンデーン占星術においては、春分点をアセンダントとして展開し、12星座を12ハウスに対応させて、地球全体に関わる出来事を読み取ります。 これについても、今までに占星術の教本で、このような内容を読んだことがなく、自分で思いついたことであれば、それはそれですばらしいことだと思いますが、占星術研究所としては、少し勉強不足なのではないかと思います。
岩田 「この『マンデーン占星術は、春分点をアセンダントとして展開し、12星座を12ハウスに対応させて、地球全体に関わる出来事を読み取ります。』というのは、大変参考になるけど、その前半分の部分はこちらの見解を理解していないように感じられるね。
『12星座を12ハウスに対応させ』というのと、『トロピカル12星座は、星座ではなくハウス』というのは一見似ているようだけど、『星座ではなくハウス』という言葉には、 『トロピカル12星座も一応使用している、高揚や減衰、ミューチュアル・レセプションなどの星座に依存する占星技法は、サイデリアル12星座と重なる部分でしか、しっかり作用していないのではないですか?』 『12星座の支配星が新発見したトランスサタニアンと置換え出来るのは、支配星が支配星として作用していないからではないですか?』 『支配星が切り替わった時間はいつですか?そして、支配星の切り替わる前と切り替わりの直後でのホロスコープ・リーディングを、西洋占星術はどう処理したのですか?』 等の問いかけを含んでいるんだ。
このコメントに即して言えば、『東西占星術研究所は、トロピカル12星座は星座ではなくハウスという見解と、トロピカル12星座と12ハウスが対応するという見解は、表面上の使い方は似ていても、その後の占星術技法の展開において大きな差の出る本質的理論構造の違いがあると考えています。』ということになる。
しかし、この限られたコメントの内容だけでは、こちらがコメントの真意を把握していないという可能性もあるね。」
桃井 「そうですね、もう少し詳しい見解を聞きたいですね。」
岩田 「でも、おかげでウラニアンとマンディーンの資料をサーチして、理論を拾う必要があることがわかったから、後はこちらで研究することかも知れないね。まあ、もっと詳細に教えていただけるならうれしいけどね。
というのは、東西占星術研究所の研究スタンスは、海外で発表された研究をいち早く翻訳し、国内に欧米での研究という権威で紹介するのが学問研究という、明治以来の日本の学問研究スタンスとは違うからね。
私の研究スタンスは、一見複雑で難解な占星技法の中に内在する理論構造を、洗練された理論体系として認識し、アクエリアス時代の高度に統合された占星術体系を垣間見てみたいという趣味的なものだから、どちらが先とかオリジナルとかの先陣争いにはあまり深入りしたくないし、他の優れた見解を聞くのはいつの時でも楽しみだからね。」
桃井 「今でもインド占星術のほかに、中国占星術や密教占星術、それにハーフ・サムやハーモニクスという西洋占星術技法と、研究課題が多いのに、ウラニアンとマンディーンですか・・・。」
岩田 「どうも、サビアンとウラニアンは手をつける気がしなくて、マンディーンもあまり興味がないから、ほって置いたんだけど、そろそろやる時期ということかな。」
桃井 「東西占星術研究所のホームページ更新も忘れないでくださいね。」
岩田 「・・・・・。」
岩田 「せっかくメッセージで、ウラニアン学派では春分点もアセンダントと同様に身体を表示する天文学的特異点として採用していると教えてもらったので、これについて少し考えてみよう。
占星術技法の理論的バックグラウンドに関する思索は、占星術技法の正しい使い方を直感的に理解する力を高め、意外なほど実占能力が短期間にアップするからね。
さて、占星術で使われる天文学的特異点としては、ラーフ&ケートゥ、春分点&秋分点、アセンダント&デセンダント、MC&IC、がメジャーな顔ぶれで、あとは若干マイナーな特異点であるリリスとかがあるね。」
桃井 「リリスってなんですか?」
岩田 「月の軌道で地球から最大距離となるポイントで、天文学的には『月の遠地点』と表現される。日本では『リリス』、『リリト』、『ブラック・ムーン』などの名称が使われているのかな。
これらの天文学的特異点の中で、春分点とアセンダントに共通する理論要素があれば、その要素が身体を表示する本質的な天文学的要素という推論が可能になる。」
桃井 「この天文学的特異点のリストを見ていると、春分点→アセンダント、夏至→MC、秋分点→デセンダント、冬至→IC、という対応があるように感じるんですけど、どうでしょうか?」
岩田 「そうだね。それは陰の極まりである『冬至→IC』を起点として、陽の極まりである『夏至→MC』に至り、再び陰の極まりである『冬至→IC』に回帰していく陰陽の周期的変化として同一カテゴリーに分類することが可能だと思うよ。
その一日サイクルが『アセンダント→MC→デセンダント→IC』で、一年サイクルが『春分点→夏至→秋分点→冬至』になっているんだろうね。」
桃井 「陰陽の循環というのは、中国的な見方ですね。」
岩田 「中国の宗教・哲学・占術を貫く、陰陽五行という世界観はたいへん興味深く、美しい理論構造を内在していると思う。それだけでなく強力な思索のツールとして使えるし、応用できる領域も広いと思うよ。
西洋占星術の優れた未来予測技法に『1日1年法』があるけど、この未来予測技法は1日サイクルの中に1年サイクルが内在しているという、フラクタル的な理論構造を根拠としている。 実占における1日1年法の有効性の高さから考えると、『春分点→アセンダント』という対応関係はかなり強力に作用しているんだろうね。」
桃井 「羽田先生のチャート・リーディングにも使われていますから、『1日1年法』はインド占星術から見ても信頼度が高い占星術技法なんでしょうね。」
岩田 「羽田先生はトロピカル12星座に対しては完全否定に近かったけど、星座が関係しない西洋占星術の技法について熱心に検証しておられ、特にプログレスやトランスサタニアンの使用には積極的だった。でもトランスサタニアンを星座の支配星として使うことは問題外と考えておられたね。 そういう意味では、東西占星術研究所はインド占星術派の研究所というよりも、羽田先生の代からサイデリアル占星学派に属する研究所であるといえるんだろうね。
話を戻すと、まあウラニアン学派が春分点とアセンダントを同じ目的で使用するのは納得できるよね。でも、どちらも身体を表示するという使い方はどうしてかな、ということになる。」
桃井 「それはちょっと見当がつきませんね。」
岩田 「この辺になると、難易度が高いテーマだから私も今後の思索テーマだと思っている。でも占星術的に身体を表す惑星は『地球』であるという見解。そして『身体を表す惑星である地球』は、ホロスコープ上では太陽やアセンダントの動きに投影されているという見解が、思索のポイントになるとは思っている。」
桃井 「地球という惑星の運行も、そういう形でホロスコープに登場しているんですね。」
岩田 「地球の自転運動は、ホロスコープ上ではのアセンダントの移動として投影されているから、より正確に言えばホロスコープを作製した地表位置という天文学的特異点が、ホロスコープ上では太陽やアセンダントの動きに投影されているという表現だろうね。
でもサイデリアル12星座とホロスコープ作成地点の間に立ち塞がる『惑星地球』の位置はICで表示されるから、ホロスコープ上でICは地球のサイデリアル12星座における位置を表すという見解も成り立つ。
この辺は、もう一度全体的な概念の整理をする必要があると思っているんだ。」
a-News 2.32
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